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○月×日『決断①』
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人混みの熱気に疲れて人気のない場所に足を運んで腰をおろした。
「ん。」
座って夜空を眺めていると、篤也さんとソフトドリンクが視界に入った。
「ありがとうございます…」
ソフトドリンクを受け取って一口口に含むと、少しだけ体の熱が引いた気がした。
「熱中症とかじゃないだろうな」
「大丈夫です。ちょっと人酔いしちゃって…」
「ならいいけど。」
篤也さんは僕の隣に腰を下ろすと、僕の手からソフトドリンクを取って残りを飲み干した。
「もうそろそろ時間だな。まぁここからでも見えるだろ。むしろ穴場?」
人気も外灯も無い、ただ虫の音だけが聴こえる。
篤也さんが言う通り穴場かもしれない。
少し離れた場所にはあんなに沢山人がいたのに。
今日は、前に雨で中止になってしまった花火大会が行われることになったので篤也さんと足を運んでいた。
…本当は、花火大会の再演を知ったとき一番に矢野くんの顔が思い浮かんだ。
だけど、僕から矢野くんを誘うことはない。
一人で足を運んで、雨に降られたあの夜が凄く寂しいものだったから。
それに矢野くんはあの日のせいで熱を出して寝込んでると母にきいた。
「あ」
顔を上げると、夜空に色とりどりの花が咲いていた。
「よく見えるじゃん。」
隣にいる篤也さんが夜空を見上げながら僕の肩を抱き寄せる。
「…はい」
夜空一面に咲く花火を見上げながら篤也さんに身を任せた。
「まこと」
「はい」
「昂平と別れろ」
「……え、」
「別れて、俺んとこ来い。」
「…」
「な?」
綺麗な花火と篤也さんを見上げた。
そっと近づいてきた篤也さんの唇を、僕は静かに受け止めた。
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