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○月×日『削除』
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「もうコレ、俺だけのなんだな」
篤也さんが出し巻き卵をつまんで口に運ぶ。
「あ、ダメですよ。座って待っててくださいっていつも…」
「こーして、こうするのが習慣てのも、いいだろ?」
もう一口分の出し巻き卵を口に運んで、篤也さんは満足そうに唇を舐めると、身をかがめて触れるだけのキスをした。
「まことのその顔好きなんだよ。それも俺だけのだな」
顔を真っ赤に染める僕の髪を撫でて、篤也さんはソファに座った。
熱を持った頬を手で扇ぎながら、出し巻き卵を皿に盛り付ける。
〝俺だけの〟
篤也さんは、嘘なんかつかない。
僕のことが好きだって言ってくれた。
山梨先輩と付き合ってたとしても、今は僕の恋人。
それでも、不安になるのは嫌だ。
矢野くんは、篤也さんを山梨先輩の男と言った。
今現在も、という意味でない事は、山梨先輩か篤也さんにしかわからないことだ。
「どうぞ」
出し巻き卵を含め、夕食を机に並べるながら、ゆっくり篤也さんを見る。
心を決めて口を開く。
「……篤也さん、山梨蘭さんと、付き合ってるんですか?」
箸に手を伸ばした篤也さんの手が止まる。
慎重に、篤也さんの様子を伺いながら言葉を続ける。
「…矢野くんが、篤也さんは山梨先輩の男だって言ってて……それで…僕…」
「昔のことだよ。…気になるか?」
「…」
小さく頷くと、篤也さんが一息ついて、ゆっくりと話し始めてくれる。
「あいつが…蘭が一年のときに出会って、少しの間付き合ってた。俺の親友とバイト先が一緒で、よく顔合わせてるうちに仲良くなってな。俺から告白して付き合うようになった。蘭も俺に惚れてると思ってたんだけどな、あいつ俺の親友と寝たんだ。だから別れた。あいつは浮気なんてしてないっつってたけどな」
「…僕も、先輩がそう言ってるの聞きました。それに、先輩が付き合ってる人以外と……なんて、思えません」
「俺もそんなやつだとは思わなかったよ。でもマジだから。俺見たし。俺の部屋で…、ココでヤってたんだからな。…ほんと、ビビった」
その時のことを思い出したのか、篤也さんは眉間にしわを寄せて、辛そうな顔をして俯いた。
「…見…、ココでって」
自分の恋人が、親友と、自分の部屋で情を交わすなんて最悪のシュチュエーションだと、僕も信じられない気持ちでいっぱいになった。
「3人で鍋でもやるかって日だったかな。俺はバイトが長引くからって、2人に準備任せてたんだ。部屋に入ってみてビックリだよ。蘭が組み敷かれてた、俺の親友相手に。無理矢理とかじゃなくてな。…ま、そんなわけで親友も蘭も切った。」
ドラマか漫画みたいな話だろ?と篤也さんが苦笑する。
僕は、少しも笑うことなんてできなくて、青ざめていたと思う。
「蘭と今更どうにかなったりしないから、心配するな?」
篤也さんが僕の手を握る。
「それに俺、あいつと寝たことないから。男はまことが初めて」
「え」
「そんなに驚くなよ。俺は男が好きなわけじゃないし、こう見えて一途だ。まことが昂平と切れたんだから、真面目に付き合うつもり。だから、不安なこととかあったら今みたいに聞いてくれていいから。な?」
「はい」
その日、篤也さんの携帯の連絡先一覧から、山梨先輩の名前が消えた。
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