アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
○月×日『ヘアピン①』
-
結局、あの後僕と矢野くんは先生のベッドを陣取って眠ってしまった。
わだかまりや、不安から開放されて自分でもビックリするくらい熟睡してしまった。
「お世話になりました」
早朝、先生にお礼を言って部屋をあとにした。
「学校、だりーな」
矢野くんが大あくびをしながらまだ薄暗い空を見上げる。
家には、矢野くんが連絡を入れてくれたらしく、ゆっくりとした足取りで帰路につく。
「サボっちゃダメだよ?」
「わかってるって。準備できたら迎えに行くから、待ってろよ」
「……ん、」
嬉しくて、照れ隠しでうつむいて返事をすると、矢野くんが笑った気配を感じた。
ポンと、頭に大きな手が乗って、髪を撫でられる。
耳までくすぐるように指が降りてきて矢野くんの手が止まった。
「これ、俺がやったやつだよな」
左耳の上に2つあるヘアピンに矢野くんの指が触れる。
「うん、そうだよ」
「幼稚園の時か?誕生日にやったんだったな。母親に、まことくんは男の子だから赤色はやめなさいって言われたの覚えてる」
矢野くんの手がヘアピンを髪からとる。
するとヘアピンがなくなった部分の髪がピョンとはねた。
「コレコレ、ここだけくせ毛」
「やだ、返してよ」
ヘアピンに手を伸ばすと、その手をつかまれて引き寄せられる。
「ん、」
矢野くんの胸に抱かれる形で倒れ込む。
「もうだいぶ古いだろ。新しいの見に行くか」
矢野くんがヘアピンを元の位置に付け直しながら僕を見る。
「……2人で?買いに行くの?」
確認のため聞いてみると、矢野くんが吹き出して笑い出す。
僕の頭をなでながら「ああ」と答えてくれる。
「……楽しみ」
素直にそう言うと、矢野くんが今までで1番というくらい優しい顔で微笑んでくれた。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
74 / 196