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○月×日『はじめに戻れ。』★
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「変人で有名だよ、花村茜」
昼食のパンにかぶりつきながら山梨先輩が知ってる限りのことを話してくれる。
「1、2年で同じクラスだったけど、かなり浮いてたかな。学校には来てるみたいだけど落ち着きなくてフラフラしてる。同性が好きなの隠してないみたいで、好みの人みつけるとしつこく追いかけるみたい」
矢野くんもそのターゲットにされた1人だ。
「花村て狙った獲物は逃がさないみたいで、落とせなかった獲物はいないらひいよ。噂だけど。…まぁ、顔も可愛いし、人の懐に入るのも上手いみたいだから、落とされちゃうのかなぁ…」
そう言って、意味ありげに先輩は僕の隣に座る矢野くんを見た。
「俺は落とされてないですけど。何度か寝ただけ」
「好きでもない人とよくそんなことできるよね」
「アンタが言えるんですか、そんなこと」
「矢野くんっ」
僕は矢野くんの手を掴んだ。
山梨先輩に対してそれは禁句だ。
先輩は好きで篤也さん以外の人と寝たわけじゃない。
それを知ってて口にするなんて酷いと思う。
「先輩に酷いこと言わないで」
「その先輩が嫌味言ってくるからだろ」
「……嫌味じゃないよ。………ほんとのことでしょ?」
そう言って矢野くんを見ると、矢野くんが僕から目をそらす。
僕に花村さんを近づけたくなくて、花村さんの相手をしていたと言っていたけど、それは現在進行形なんだろうか…。
矢野くんの、性に対するタガの緩さには、何度も悩まされてきた。
同性は僕と花村さんだけみたいだけど、異性は数しれない。
学校の中だけでも何人矢野くんの元カノ……セフレ?がいるんだか…。
「柚野ちゃんが心配だよ…。」
「は?アンタに心配してもらう必要は…」
「心配なのは君と居るからなんだけど?言ったじゃない、君といるより篤也といたほうが柚野ちゃんにはいいって。」
「……あの人は、アンタの男だろ」
「違う。」
「……」
「いくらそばにいたって、君が変わらなきゃ……意味無いんだよ、矢野くん。僕の言ってる意味わかるよね?」
山梨先輩がまっすぐに矢野くんを見る。
僕は少しの間だけ委員会が一緒だったただの後輩なのに、こんなに親身になってくれる先輩に胸が締め付けられた。
「……俺がゆずと付き合えば満足かよ」
「え、」
矢野くんの言葉に間抜けな声を漏らしたのは僕だった。
わけがわからなくて、矢野くんと先輩を交互に見た。
「そういう意味で言ったんじゃないよ。けど、柚野ちゃんを守りたいなら、中途半端はしないほうがいいってことだよ。他の人に現を抜かした時、手遅れになったらどうするの?……この間みたいに花村につれてかれたりしたら…」
先日、山梨先輩と別れた後花村さんのアパートに連れていかれた事は、山梨先輩には話していた。
地面に転がった僕の弁当箱を拾ってくれたのは先輩だった。
翌日先輩から弁当箱を引き取った際に洗いざらい話してしまった。
「……矢野くんはさ、好き勝手やってるくせに無責任だと思っただけだよ。」
矢野くんは暫く黙り込むと僕を見る。
「俺と付き合うのに不満はないよな、お前は」
まるで自分は不満があるという言い方に、言葉が出てこなかった。
付き合うって、そういうことじゃない。
矢野くんに、好きになってもらえるように頑張ろうと思っていたところだったのに、こんな形で矢野くんの恋人になれるわけがない。
「アンタはもう口出しすんなよ。」
矢野くんは僕の腕をつかんで立たせ、先輩を人睨みすると校舎の中へ足を進めた。
まっすぐ教室に戻るのかと思いきや、男子トイレに立ち寄って、奥の個室に無理矢理押し込まれてしまう。
「矢野くん……?」
「俺達付き合うんだろ。」
そう言うと、矢野くんは僕を跪かせ、自分のズボンのベルトを外して性器を取り出し、僕の顔の前に突き出す。
髪が抜けてしまうんじゃないかという力強さで前髪をつかまれて、痛みに顔をしかめたのも束の間、口の中に無遠慮な矢野くんの性器が押し込まれた。
瞬きも忘れて口をいっぱいに開けながら混乱した。
今、何が起こってるのか…
山梨先輩に失礼な態度をとってしまったな
トイレの床にしゃがみ込んで汚いな
……とか、そんなことじゃない。
「ぐっ」
急に喉の奥を異物に突かれ、吐き気が込み上げた。
今の衝撃で呆然としていた意識が戻ってきて、途端に息苦しさを感じで矢野くんのズボンを強くつかんだ。
顔を引き剥がそうと思っても、僕の力の何倍もの力で矢野くんの手が僕の頭を抑え込んできて放さない。
「ぅっ、う"……ッ、」
自分の嘔吐く気持ちの悪い声がトイレの個室に篭る。
断続的に口内を突かれて、舌の上を擦りあげるソレが矢野くんのだとわかっていても不快感しかなかった。
「っ、」
頭上で矢野くんの呻くような声がしたと感じた瞬間、口内で何かが弾けた。
ぐっと、限界まで押し込まれて、矢野くんの腰が痙攣する。
喉の奥にドロドロと何かが流れ込む。
「っ、う"……ッ」
喉の奥が嫌な音を立てて、胸が詰まりそうになったと同時に、矢野くんに頭を開放されて口内から性器が抜かれる。
堪らず便器にしがみついて、こみ上げてきたものを吐き出した。
吐いて、また吐いて、苦しくて涙が零れて、便器に顔を突っ込みながら肩を震わせていると、舌打ちをする音が聞こえ、個室から矢野くんが出ていった。
全力疾走した後みたいに、息が荒い。
よろよろと起き上がって洗面台で口内を洗った。
何度洗っても、喉の奥に不快感がある。
顔を上げて鏡に写った自分を見ると、口のはしかが切れて血が滲んでいた。
…………何、今の?
苛立ちをぶつけられた…?
山梨先輩との口論が、そんなに気に触ったんだろうか。
……僕を恋人にするのが、そんなに気にいらないんだろうか。
だからって、これじゃあ……
「……ぁ……、っ、う……」
鏡に写った青白い顔した僕が泣いてる。
大粒の涙がとめどなく流れて洗面台を流れる水に溶けてく。
ここ数日の陽だまりのような優しさは何だったのか。
矢野くんからの謝罪や、優しさは、幻だったのか。
変わらない。
僕と矢野くんは、変われない。
また戻った。
中学三年のあの日に。
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