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○月×日『傷』
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学校を休んだ。
矢野くんが迎えに来てくれても、両親に心配されても、部屋から出る気になれなかった。
両親は、矢野くんと喧嘩でもしたんだろうと思っているようだった。
矢野くんが御見舞にきてくれていると伝えに来た母親に、矢野くんを追い返すよう頼んだことからそう捉えたようだった。
……喧嘩なら、ただの喧嘩ならまだよかった。
中学三年のあの日、無理矢理セックスを強要された。
怖かった。
あれから二年がたとうとしていた。
また無理矢理欲望をぶつけられた。
僕はどこまでも矢野くんのお人形でしかないんだろうか。
今まで体を重ねてきても、どこかに少しでも優しさを感じれていた。
髪を撫でてくれたり、手を握ったり、抱きしめあったり、キスしたり……。
欲を吐き出して、汚されて、置き去りにされた。
矢野くんは僕を置き去りにしたのに、次の日の朝も、その次の朝も、またその次の朝も僕を迎えにきた。
母親になんと言われてるか知らないけど、いつも渋々といった様子で諦めてひとりで学校へ行く姿を、部屋から覗き見ていた。
あれも、どうかしてたって言って、謝ってくれるつもりなんだろうか。
切れた唇は綺麗に傷が消えたけど、それより深く傷ついた心は癒えない。
今は、矢野くんを好きだなんて、微塵も想えない。
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