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〇月×日『告白①』
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篤也さんと部屋に帰宅すると、玄関には先輩の靴がおいてあった。
篤也さんはそれに気づくと一目散に部屋の奥へかけていった。
僕もそれに続いて部屋にはいる。
「……、」
先輩は部屋に入ってきた僕らに目もくれず、大きな鞄に荷物を詰めていた。
「蘭…?」
篤也さんが呼びかける。
先輩が手を止める。
けれどこちらを見ようとはしない。
「おい、なにしてんだよ」
篤也さんが先輩の側に屈んで目線を合わせようとする。
それでも先輩は顔を上げてはくれなかった。
「まさか出てくのか?……殴ったことなら謝っただろ?」
篤也さんがそっと先輩の頬に触れようとすると、先輩が顔を引いて篤也さんの手から逃れる。
「……蘭?」
「…………、」
先輩の唇が小さく開かれて、すぐに閉じられる。
小刻みに震えてるように見えた。
「おい、蘭っ」
再び先輩が鞄に荷物を詰め出すと、篤也さんが痺れを切らしたのか強引に先輩の腕を掴んで自分と向き合う形にしてしまう。
「黙ってたらわかんねぇだろっ」
隣の部屋に聞こえそうな声量で篤也さんが怒鳴る。
そんな篤也さんに、やっと先輩が顔を上げて目を合わせる。
その表情は、いつも穏やかな先輩からは想像できないくらい冷たいものだった。
「……こんなとこ、もう居たくない」
「は?」
「聞こえなかったんですか。こんなとこ、居たくないって言ったんですよ」
先輩は、まるで篤也さんを拒絶しているかのように見えた。
それほど表情も、声色も冷たかった。
そんな先輩の様子に篤也さんも戸惑っているようだ。
「僕のこと、引き止めておいて……期待してあなたについてきて、馬鹿みたいだ。口を開けばまこと、まことって…、挙句、僕のことは二の次だし、…………まだ続いてるんですか、復讐てやつ…」
「……は、……何言ってんだよ…」
「3人でこんなとこに住んで、2人の仲を僕に見せつけたかった……?」
「そんなわけないだろっ?お前何言って……」
「僕はっ、柚野ちゃんとは違うっ。あなたと付き合ったことがあるってだけで……でも柚野ちゃんは違うでしょ?僕が気にしないと思ってた……?あなたが僕に触れないのは、真鍋先輩のことがあるからだと……けど、愛情がないからだって、わかりました」
先輩が、小さく項垂れる。
「柚野ちゃんから真鍋先輩のこと聞いて、……ショックで、あなたに拒絶されても、ずっとどこかで繋がってる気がしてたのに…それが無くなって、…あなたじゃない男に合意無しに犯されたんだって再認識させられて、気持ちが悪くて……毎日吐いて、それでも自分にも落ち度があったんだから仕方ないって言い聞かせて……、……あなたが迎えに来てくれてから、上手くいってる気がしてたんです……。付き合ってたあの頃みたいに……て……、」
先輩が、篤也さんから、ゆっくりと僕を見る。
「……柚野ちゃんが心配なのは、本当だけど……3人で暮らすうちに、自分がすごく惨めになってきちゃって。篤也さんがここまでしたくなる存在なんだって、悔しくなった。1人でこの部屋で受験勉強してても全然落ち着かない。ここで僕は犯されたのに……2人は愛し合ってたんだから。堪らなくなって部屋を出て、2人を追ったら、仲良さそうに歩いてた……周りに人がいるのに、篤也さんに肩抱かれて……」
「ぁ……」
あの日のことだと気づいた。
先輩の勉強の邪魔になるからと篤也さんと出かけて、誰かに見られてる気がして、夕食だけ調達して帰ったあの日。
あの視線は、先輩だったんだ…。
「ただの嫉妬だよ。部屋に戻ったら打たれるし、胸の中に溜め込んでたものが、溢れてきちゃって……。柚野ちゃんにはあんなに優しく触れるのに、僕にはこんな…」
先輩の手が、強く自分の腕を掴む篤也さんの手に触れる。
篤也さんはハッとしたように手を離すと、先輩から目を逸らした。
「悔しくて、悔しくて……僕と同じ気持ちを味合わせたいと思った…篤也さんにも、柚野ちゃんにも」
「ぇ……?」
先輩は、真っ直ぐに僕達を見ていた。
冷たい表情の中には、哀しみも憎しみ見え隠れする。
それが急に恐ろしくなった。
「……矢野昂平と寝た。」
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