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〇月×日『環境』
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休日の昼、最寄り駅から1時間の距離にあるカフェでランチ。
ランチの相手は元カレの木崎篤也だ。
「やっぱサラリーマンとか向いてないんだな、何社も見たのにピンと来なくてさ。でも今の職場は向いてると思う」
「接客業向いてると思う。篤也さんと話してると楽しいから」
「さんきゅ」
篤也さんの就職活動の最終地点は、バーの経営者だった。
知人の経営している店舗の1つを任せられたらしい。
「ほんとは店見せたかったんだけどな。リニューアルしていい感じになったからさ。けどまことはまだ未成年だからな」
「成人したらお店に呼んでください」
「じゃあそれまで店が潰れないように頑張らなきゃな。ま、その前に大学を無事に卒業するのが先か。卒業できなきゃ店長からバイトに格下げだ」
「篤也さんなら大丈夫、頑張ってください」
僕と、篤也さんの会話の中に、矢野くんや山梨先輩の名前は1度も出なかった。
篤也さんは知ってか知らずか、気を使ってくれてるんだと思う。
僕は、また余計なことをして未来が明るい篤也さんの邪魔をしたくなかった。
きっと篤也さんならすぐに良い人が見つかる。
大人で、カッコよくて、優しい人だから。
ここはたった1時間しか離れていないけど、僕達がいる所よりずっと栄えた街に見える。
環境が変われば、気持ちも少しずつ変わっていくのかもしれない。
「無事卒業したらこっちに引っ越すからさ、遊びに来いよ」
「はい」
僕は、変化していく環境に置いていかれてる。
矢野くん、先輩、篤也さん、
みんな前に進み出してる。
僕だけ進む先に何も見えてない。
帰りの電車に揺られながら、自分の将来に不安を覚えた。
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