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〇月×日『綺麗な笑』
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「こんにちは」
放課後、図書室で読書をしていると声をかけられた。
顔を上げると、先日会った1年生の土岐歩くんだった。
「ぁ…………こんにちは」
近くで見ると、矢野くんに負けず劣らずの美少年だ。
透き通ったグリーンの瞳に思わず見とれてしまう。
「1人ですか?矢野先輩と一緒じゃないんですか?」
土岐くんは辺りを見回す。
図書室には僕と土岐くん以外に人はいなくて、静まり返ってる。
「矢野くんは、恋人と帰ったから…」
「恋人……そういえばクラスの子が騒いでいたかも」
「……あの……、昨日は大丈夫だった?」
「……、いいえ」
土岐くんは僕の隣に腰掛けると、視線を落としながら口を開く。
「…授業サボっちゃいました」
「……えっと、それって…花村さんと……?」
苦笑いで返される。
きっと彼の意思は尊重されなかったんだろう。
花村さんは思うがままに行動する人だ。
嫌だと言っても聞いてもらえない。
というより、聞いていない。
「……俺の何が気に入ったんですかね」
土岐くんは全く検討もついていないようだ。
「花村さんに、何か言われたりしてないの?」
「……んー、登校初日に、校舎の中で迷ってたら声かけてくれて、教室まで案内してくれるって言ってくれたのが茜さんでした。案内してくれる間簡単に自己紹介して……、けど、案内してくれた先は1年生の教室じゃなくて、使われてない教室で…」
そこで土岐くんは口篭る。
つまりそこで花村さんに襲われた、ということだろう。
「…俺、すごく驚いて……」
「……そうだよね。花村さん無害そうだから、僕も初めて会った時驚いた」
「そうなんですよ、凄く綺麗で、可愛い感じだから……ただ驚いて、…………でも、あとから聞いた話だと、有名みたいですね、素行が悪いって」
「うん…」
転校早々災難だと思う。
いくら見た目が綺麗で可愛くても花村さんは男性だし、同性にレイプされるショックは、僕も痛いほど気持ちがわかる。
「……俺、男性相手は流石に経験なくて、茜さんにされるがままで。……普通は、嫌なら反応しないものなんですかね、俺は全然…反応しないどころか……ぁ、すみません」
内容が生々しくなってきたところで、土岐くんは口を閉じた。
僕も聞いているには少し照れくさくなってきて、顔が熱くなってきたので俯いて誤魔化す。
それから少し考えて、意を決して口を開く。
「……僕もね、似たような経験したよ。けどね、嫌いにはなれなかったし、むしろ、自分が特別なんじゃないかって思っちゃって、好きになっちゃった…」
土岐くんの瞳を真っ直ぐに見つめた。
土岐くんが驚いたように僕を見つめ返す。
「……俺、本当は矢野先輩と話がしたかったんです。俺と同じ気がしたから……。だから柚野先輩といたら会えるかと思って。けど、あなたと話せてよかった。不安だったのが、少し楽になりました。ありがとうございます」
土岐くんが小さく微笑んだ。
それが凄く綺麗な笑で、思わず見とれてしまった。
土岐歩。
一つ年下の後輩。
彼にはなにか惹き付けるものがある。
彼の綺麗な笑から目が離せなくなっていた。
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