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嘘つきの末路
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「ヒロって、本当に私のこと好き?」
キャラメル色の髪の毛、ピンク色の口紅、白くて細い体、思考も話し方も仕草も完璧な彼女。
「ううん、好きじゃないよ」
「…やっぱりね、」
「愛してる」
そして熱烈なキスを彼女の唇に。それだけでうっとりとした表情を見せる彼女、ねぇ ごめん、キミ、名前なんだっけ?
「ヒロ、わたしも弘を愛してる…!」
うんうん、俺も愛してるよ。すっごく愛してる。なによりキミは可愛いしいい匂いだしそれからおっぱいが大っきいし。うん、うんそうだね、そのメンドクサイ姫思考な性格も女臭い態度もぜんぶぜんぶひっくるめてダーイスキだよ。
「そっか、じゃあ別れようか。」
「…え?」
「俺、女の人に愛されるの嫌いなんだ」
なーんてね。愛されるのが嫌いな人間なんてどこにいるの?
嘘だよ、嘘。ほら、そんな顔しないで?
だってキミも俺と同じで俺を愛しているわけじゃないじゃないか。
左頬を思いっきりぶたれて、ジンジンと痛む頬を撫でる。「痛いね」というと「最低」と返ってきた。背中を向けてヒールを鳴らして去って行く彼女。
「ねぇ!キミ、名前なんだっけ!」
ぴた、と歩くことをやめた彼女は振り向いてもう一度「最低!」と叫んだ。あはは、その顔、すっごく可愛いよ。不細工でさ。
と、まあ、俺は法螺吹き。
女の人に愛されるのが嫌いなわけじゃなくて、男の人がすきなだけ。
あははっ、うそうそ!そーんなわけないでしょ?女の人、だーいすきだよ。
今日もいつも通りの日常を、今日もいつも通りの嘘を、誰とも繋がらない俺は、誰とも繋がれない俺を愛してる。愛してる。
痛む頬を撫でながら前方に猫と、その猫を追いかけて飛び出してきた女の子と、トラックをまるでドラマのワンシーンを見るように眺めてた。ああ、あの子今日死んじゃうな。俺は俺を愛しているから、助けたりなんてしないけど。
雑音、のち悲鳴と衝撃。反転。視界が真っ白になって、赤いモノが飛び散る。
身体が重くって、起き上がれないよ。あーあ、あー。
嘘つき、人生八十年って言ってたくせに。
「たった19年、じゃないか…」
嘘つき、助けたりなんてしないって言ったくせに。
嘘つきは地獄で舌を抜かれるらしいから、きっと俺はあの世で馬鹿な顔して口を開けなきゃ。あーあ。あーあ。死んじゃうのは俺のほうだった。身体って、こんなに冷えるんだ。世界ってこんなに暗いんだ。
ねぇ、ところでさ、
まだ四年ぐらいしか生きてない赤いワンピースの女の子、どこも痛くない?俺?俺はね、もうどこも痛くないよ。
「どなたか救急車を呼んでください!!すみません、大丈夫ですか?!すみません、娘のために、ああ、血が…」
駆け寄ってきたのは女の子の母親らしき人、霞む視界の中でぼろぼろと涙を流しながら俺の血を止めようとしていた。その横に泣き叫ぶ女の子が、いて、あ、無事だったんだね、よかったよ。なんて、俺お母さんなんていたことないから嬉しーな。なんて。そんな事を考えて、また、俺は
「…大、丈夫、よかった…」
なんて、嘘を 吐いた。そして暗転。
瞼の裏を見つめてた。瞼の裏、を。
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