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45日目 ゆうすけ
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毎日つまんねぇと思ってた。
田舎から出てきても喧嘩三昧の毎日、バカみたいなやつらの機嫌とり、疲れ果てた人間の生き霊と、未練で苦しむ霊がうようよいるこの世界。
幽霊なんて嫌いだった。
惨めで惨めで嫌いだった。
俺は未練なんて残さないように生きて死んでやると思ってた。
はじめて、現世を離れたがってる幽霊が、はじめて、この世を呪ってるる幽霊が、ヘラヘラした幽霊が、俺の前に現れた。なあ、これは、これは運命だよな?
お前は死んで、なにを求めてここに来たかわかんねぇけど、神様はきっと、俺がこいつに何かを与えるようにこいつをここに縛ったんだよな。
俺にあげることができるのは、この両手から零れそうな愛だけ。
もうすぐ、いなくなる幽霊に恋をした。
全然伸びない髪を見つめると、こいつがもう死んでることを思い知らされる。
さらさらと、綺麗な髪。透けてグレーにみえるけど、きっと綺麗な黒髪だったんだろう。
もし、生きてるときに出会えていたら、お前と俺が、出会えていたら。
俺はお前に恋をしたのかな。
俺はお前を愛してやれたかな。
お前も俺に、すきって言ってくれたかな。
「ひろむ、絆創膏とって」
「棚にあるんだよね、もう覚えちゃった。キミ怪我しすぎ」
「うるせぇ。飯作ってたら切ったの」
「あははーどじっこー、はい」
俺の目の前に置かれた絆創膏。お前が触ったもの、直接お前に触れないけど、これだけでも嬉しい。
毎日つまんねぇと思ってた。
大嫌いな幽霊が部屋に住み着いてから、俺の世界は変わった。灰色だった世界の色が、お前の目の色一色になった。
ありがとう。
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