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9日目 ひろむ
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毎朝わざわざ早く起きて、似合わないのに髪をワックスで立ててる不良くん。昨日の夜、突然布団に招きいれられたことに、俺はなに一つツッコミをいれなかった。この不良くん、どうして俺が毎晩部屋のすみに座って朝を待つことを寂しく思っていることに気がついたんだろう。イヤに空気の読めるガキだよまったく。
「毎朝大変だねぇ。似合ってるよ」
「気合いれねーと。んじゃ、行ってくるからおとなしくしてろよ」
「あはは、なーに新婚さんみたいなこといってんの?」
「きしょ、シネ」
「もー死んでるってー」
パタン、と閉じられる扉を見て、急に寂しくなった。昨日の出来事のせいで頭がおかしくなったのかな。
正直、動揺してる。
それに、幽霊になってから、俺はひとつ知ったことがある。
「俺って寂しがりだったのねー」
生きてる間は毎日女の子がそばにいた。暇つぶしで一緒にいただけだけど、気がまぎれてよかった。ただいつもどこか虚しかったけど。
でも昨日はなんか、許されてる気分になった。ここにいてもいいって、居場所をもらえた気がした。死んでからそんな感情になってどーすんのって感じなんだけど。
あーあ、やめよやめよ、一人になるといきなり必要のないことまで考えてしまう。ジャラ、と足首から伸びる鎖の音が、やけにうるさく感じた。
「早くかえってこないかなー」
なにが嘘なのかわからなくなるような、俺の嫌いな類の言葉が自分の口からふいに零れた。
俺って死んでみて、素直になったのかも。ねぇ、これだけでも十分生前になかったものを手にいれたじゃない、もうはやく、おかしくなる前にはやく殺してくれないかな。
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