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48日目 ひろむ
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人生は常に時間を浪費してるのだ、
と、名言でも残しとくよ。消える前に。人って贅沢だよね、いつ死ぬか分からないのに時間を支払って無駄な時間を生きてるんだから。どうせ時間を支払うなら、やりたいこと思いっきりやっておけばよかった。死んでもいい、なんにも悔いはない、そう思ってた俺は、簡単に車に飛び込んだ。まだこの先がある少女のために、なんて聞こえはいいけど、これも自己満。俺は自己満のために高い時間を支払った。ある意味傲慢で、許されない行為。
現世に未練なんてない、はずだった。未練と思えることがパッと浮かばなかっただけだと気づいたときにはもう遅くて俺は完全に死んでいた。その心の奥底に眠ってた「未練」を掘り起こしてくれたのは紛れもなくキミだったよ。
俺がここに繋がれた意味が、わかったよ。
神様は意地悪じゃない、優しくて残酷なだけだ。どうせなら死ぬ前に出会わせて欲しかった。そしたら俺は時間を支払って祐介くんを愛したのになぁ。生涯ずっと、キミだけを愛したのに。嘘じゃないよ、ほんとだよ。目の色みせてあげてもいいよ、ほんとだから。嘘つきな俺の言葉なんて君しか信じてくれないんだから、どうか信じてよね。
俺の未練は、愛されること。
俺が手にいれなければならなかったのは、素直な気持ち。
「もうすぐだね」
ふたつとも与えてくれたキミに、俺はなにをあげようか。
「なあ、名前呼んでくれよ、俺の」
「…ゆうすけ?」
「もっと」
「祐介、祐介、祐介、ゆうす、け」
「弘、すきだ」
「あはっ、キミってほんと馬鹿だねぇ?それしか言えないのー?」
「うっせぇなぁ、これしか言うことみつかんねぇんだよ」
「ほかにあるでしょー、サヨナラとかさー」
「はは、…いえねぇわ」
「まっすぐだねぇ、眩しいぐらいに」
俺のキモチはね、もうわかってると思うけど、今は口にしないよ。いやもう消えるまで言うつもりはなかったんだけど、俺にあげれるものはもうなにもないから、
時計の針が0時を指す。カラダがふっ、と軽くなって、ジャラジャラと喧しかった足枷が外れた。
「ゆうすけくん、星が見たいんだ。最後に」
この都会に綺麗な星なんて見えない。それでもキミとの最後の思い出が星を見ることだなんてロマンチックでしょう?
消えそうなカラダを引きずって外にでた。
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