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病院から帰り付き佐倉家に入ると、リビングで何やら楽しそうに琴子と芳美が談笑していて、テーブルの上には旅行のパンフレットが広げられている。
「 あらお帰り。琥太郎、有難うね。」
チラッとこちらを向いてそれだけいって、またパンフレットに見入る二人に巫女都は聞く。
「ねぇ、なに見てるの?」
「これ?来週から旅行行くの!情熱の国よ!キャー楽しみ♪お土産買ってくるから!」
「 えっ!?...二人で?」
驚いて聞き返す僕に、ママは各々夫婦で行く旨と、10日程の旅行の間、僕が佐倉家で正ちゃんと琥太ちゃんの面倒を見ることを、物凄くざっと話してきた。
「巫女ちゃんにおんぶに抱っこになると思うけど、あの子達の事宜しくね。知ってると思うけど、本気でなーにも出来ないから!」
自信満々に不出来な息子を頼んできた芳美に巫女都は苦笑いで返した。
翌日、学校までの送り迎えを琥太ちゃんが申し出てくれたけど、僕は申し訳ない気持ちになる。
「.....琥太ちゃん、折角休みで帰って来たのに朝から悪いよ、」
車の前で渋る僕から琥太ちゃんは「いいから」と言ってカバンを取ってって、乗車を促してくる。
助手席のドアを開けられたと思ったら、急に身体がフワッと浮いて琥太ちゃんに抱え上げられたからびっくりしてしがみつく。
「 わっ!? ちょっ、琥太ちゃん!?」
「 ほら、頭下げてろよ。」
「自分で乗れるよ!!」
巫女都が言うのにも構わず、琥太郎はくつくつ笑いながら巫女都を助手席に乗せた。
「 あ、ありがと....。」
「どういたしましてお姫様。...こら、あんま可愛い顔してると、キスしちゃうぞ? 痛てっ!?」
助手席に座らせた巫女都の鼻を摘み、顔を近付ける琥太郎の脇腹を正太郎は松葉杖で思いっきり突いた。
「 ざっけんな。んな事したら殺すぞ。早く俺を乗せろ。」
「...痛ってーな。おまえは逸そ歩いて行け!」
突かれた脇腹を擦りながら運転席に向かう琥太ちゃんに、正ちゃんがギャンギャン文句を言っていて、僕は慌てて車を降りて正ちゃんに肩を貸した。
学校へ着くまでの50分程の間、信号待ちの度に手を出してくる琥太郎に巫女都はげんなりし、正太郎がその都度後部座席から運転席の背凭れを蹴るので、学校に着く頃にはシートは足の跡で凄まじく汚れた。
帰りも迎えに来るから連絡しろよ。と手を振って帰っていった琥ちゃんを見送ってから、僕は正太郎に提案する。
「...正ちゃん、帰りは電車で帰ろっか。...多分、その方が精神的には疲れない。」
「...だな。一本だし電車のが速ぇしな、よっぽどそっちのが楽だわ。」
朝で渋滞してたから時間も掛かった。しかも50分でこんなに疲れたのに、2日後からは佐倉家で3人、四六時中一つ屋根の下で10日も。と考えるだけで精神が削られる様な気がした。
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