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「 巫女都くんに会えるのは嬉しいけど、もう怪我はしないようにね。お大事に。」
「 本当に有難うございました。ほら、正ちゃんもお礼言って!」
「..........どうも。」
治療を終え、笑顔で感謝する巫女都とは対象的に正太郎は適当な礼を述べたが、内心ではちゃんと藤堂に感謝していた。
病院を後にして、鈴木さんと一緒に一度戻った琥太ちゃんに迎えを頼もうと思って電話を掛けど繋がらなくて、僕たちは仕方無くタクシーに乗った。
運転手さんに行き先を告げてから僕はスッと正ちゃんの手を取って繋いだんだけど、正ちゃんにその手をバッと離されて、僕は凄くびっくりした。
「...........正ちゃん?」
「...あっ、.....わりぃ。松葉杖付いてたから、手汗凄げぇんだ...。」
そう言いながら然り気無く手を隠した正ちゃんを見て、僕は凄く不安になったのに、そうなんだって作り笑いで答えて、その後は家に着くまで終始無言だった。
家に付きリビングのドアを開けて二人は揃って呟く。
「「 ................寒っ!? 」」
中では琥太郎がソファーで爆睡してて、居たなら迎えに来いよと俺は思ってたけど、巫女はパタパタと2階に上がってタオルケットを持ってきて琥太郎の上に掛けてやってる。ほっときゃいいのに。
たく、巫女はお優しいこった。...しかし参ったな、思ってたより重症だな...こりゃ。
自分の意志で無いにせよ、産まれて初めて巫女に手を上げた事で俺は巫女に触れるのが怖くなっていた。あんな事をされて尚、強く清い巫女に対して俺は酷く弱くて凶悪な考えの持ち主だと自覚したら、そんな俺が巫女に触れたら穢すんじゃねぇかと強迫観念に捕われていた。
「 正ちゃん、お昼大分過ぎちゃったし、朝も食べてないからお腹空いたでしょ? すぐ何か作る」
服をクイクイ引っ張りながら言う巫女を避けるように俺は座る。
「昨日の残りで軽く食えばいいよ。...巫女、まだ痛てぇだろ。夜は出前取ろ?」
「......わかった。じゃあ、直ぐ支度する。」
適度な距離を保ち言う正ちゃんに僕は苦笑いで答え、キッチンに逃げた。
.......正ちゃん、なんか変。もしかして....。
僕は一人考えていた。そうであって欲しくは無いと思いながらも、もしかしたら穢された自分に触れられる事を嫌っているのでは、と思っていた。
誰の目から見ても明らかな程独占欲の強い正ちゃんが、未遂で済んだにせよ強姦されそうになり、ましてや性器を唇に押し付けられている所を見て怒っていない訳がない。ひょっとしたら怒りを通り越し、既に僕を要らないとさえ思っているのではと、そこまで考え慌てて首を振る。
そんな事無い!......無いよね。
ネガティブな思考になるのを必至で止めようと、巫女都はその後、殊更笑顔で正太郎に接した。
しかし夜になっても二人の距離は縮まらず、触れられる事を避けている様子の正太郎に巫女都の心は折れそうだった。
いつもべたべたとくっついて居る二人が、一定の距離を保っているのを見て琥太郎も訝しく思ってはいたが、何も言わずにいる。
重い空気のまま夕食を済ませると、正太郎は痛み止を飲むと巫女都に言った。
「ちっと痛むから先休むわ。...風呂は...わりぃ。今日は入れてやれねぇ...。」
「.......わかった。大丈夫...」
返事を聞くと、早々に2階へ上がって行く正ちゃんの背中を僕はボーッと見つめていた。
そんな巫女都を頬杖を付きながら見ていた琥太郎が、いつものおちゃらけた口調では無く本当に親切で言う。
「 巫女都、俺が風呂入れてやろうか? その手じゃ洗えねぇんだろ?」
「...うん、ありがと。でも、大丈夫、適当にやるから!琥太ちゃん、先入って。僕これ片しちゃうから。」
笑顔で断り、出前の食器を下げ始めた巫女都を手伝うと、琥太郎はその頭をポンポンと撫でて浴室へと向かった。
巫女都は四苦八苦しながら食器を洗って拭くと、痛む右手でペンを持ち書き置きを書くと、それをダイニングテーブルに置いて出前の食器片手に佐倉家を出ていった。
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