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事件勃発
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「会いたくない?」
朝起きて。恒例の御当主様への挨拶のために身支度を整えてお師匠様の部屋へ行った時のこと。部屋の前でおろおろと右往左往している咲湖お母さんを見つける。
どうしたんですか?と声をかければ、咲湖お母さんは困ったように微笑んでから「あのね」と事の顛末を話してくれた。
「昨日実さんとね、この間の貴方との話をお父様にお話したの。そうしたらお父様いじけちゃったのよ」
「いじけちゃった?」
え、それどういう意味ですか? と問い返せば咲湖お母さんは苦笑い。
いじける? 怒ってるんじゃなくていじけてる?
「あの、それってお師匠様は俺が神宮を出ることを……」
反対はしてないって事ですか? と目で問えば、咲湖お母さんはとりあえず朝ご飯にしましょうかと俺の背を押して居間へと促した。
かちゃりかちゃりと食事をする音だけが居間に響く。会話は、ない。
いつもは俺の隣にはお師匠様がいて、時計回りに咲湖お母さん、実お父さんと食卓を囲む。
俺がまだ小さい頃はそれに兄弟子で咲湖お母さんの息子である秋都さんと海都さんがいたけれど、二人とも大学を卒業すると同時に家を出てしまって今は俺とお師匠様と咲湖お母さん実お父さんとの四人暮らし。
週末は秋都さんと海都さんのお兄さんの鈴音兄さんが帰ってきてくれるから寂しくはないけど、二人に懐いてた俺は最初の頃はよく泣いてたっけなぁ。
そう懐かしい思い出に意識を向けていると、実お父さんが溜息混じりに「じいさんにも困ったもんやなぁ」と呟いた。
「昔っからやで。気に入らん事があったらすぅぐ部屋におこもりや。小さいややこじゃあるまいに。飯は家族全員揃ってっつーたんは誰や」
「会いたくないって、やっぱり俺のせいですか? 俺が他の事をやりたいって言ったから……」
「まぁそれもあるけどおこもりはもう癖みたいなもんやから気にしんとき。わしが咲湖さん嫁にもらうて挨拶来た時も三日三晩出てけぇへんかったし。なぁ?」
「そうねぇ。結局は実さんが辛抱出来なくて扉蹴破っちゃったのよね」
「せやったかな?」
「ええ。もう実さんたら昔からワイルドだったから」
あはは、うふふと笑い合う夫婦に今度は俺が苦笑いをもらした。
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