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「……まぁ成り行きでした。高校を卒業した時に友人だった先代社長にこの事務所に就職しないかって言われてそのまま。最初は覚える事もたくさんあって、この業界独特のルールみたいな物があって。人間関係とか面倒だと思った時期もありました」
「叔父さんが!?」
「何故そこで驚くんです?」
「だって、何ていうかそう言うのソツなくこなしそうだから叔父さんは」
身内びいきかもしれないけど、叔父さんは誰にでも愛想いいし丁寧だし。世渡りがうまそうだし。仕事にも真面目だって実さんも言ってたし。
「そうですねぇ。まぁこの業界だからこそ身に付けられた処世術って言うのかな? 誰だって最初から何かに長けていたわけじゃありませんよ。僕だって色んな失敗をしたし間違いも起こしました。今より若い時は、ね」
叔父さんは机に肘を置いて頬杖を付き「だからね」と言葉を続けた。
「今の仕事にはそれなりにプライドと自信を持っています。だから貴方の様にちょっと躓いたからと言って違う事に逃げようとする人が大嫌いなんですよ」
「……っ俺は逃げようなんてしてません!」
「しているでしょう。自分に課せられた課題も全うせずよそ見して。神宮の名に恥じない様立派な女形になると僕に言ったのは誰だったかな?」
「しています! お稽古だってちゃんと毎日お師匠様の言い付け通りこなしているし、勉学だって疎かにしていません」
「だから?」
「だからって……」
「そんな当たり前の事を何威張って言っているんです。貴方が望んだことでしょう。貴方がやりたいと、望んだ事です」
何の感情もこもってないそんな冷たい言葉を返される。何か言い返そうと思っても口は言葉をなさずパクパクと動くだけ。
そんな俺を見やりつつ叔父さんは話を続ける。
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