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ギスギス
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倒れてから2時間ほど経ち、軽い睡眠を終えだいぶ体調も落ち着いた馨はベッドから起き上がりカーテンをめくる
談話席の机には相変わらず鷹司がおり起きてきた馨の方を向いた
「おはよう。…顔色は良くなったな」
その声色に馨は安心感を感じコクリと頷く
時刻は午後3時手前
「腹減ったか?」
時計を見ていると鷹司が問いかけてき馨は自分の腹に手を当てた
「…あまり」
「まぁ、なくても無理ないからな。流動食だったらいけるか?…ここ座れ」
鷹司は馨を向かいに座るよう指示し、自分は席を立つとそばにある冷蔵庫からゼリー飲料を取り出し馨に渡す
「食欲なくてもとりあえずこれだけでもとっておけ」
そう言われ馨は素直に蓋を開け小さな口でゼリー飲料を少しずつ吸い始めた
その姿に満足げな鷹司は自分の席へと戻ると目線を下に向けプリントに目を向けてはペンを持って置いてを繰り返す
お互い話す事もないので無言の時間が流れる
だがその空間の居心地が良かった
目の前の彼に気を張らなくなったのか、熱中症からの浮遊感が抜け切ってないのかわからないが自然体でいれるような気がした
ふと馨は何をしているのだろうと思いプリントに目をやると課題テストの問題の案や今後の授業内容の構成だった
(……生徒の前でやっていいの?)
そんな事を思うが鷹司は気にしないかの如く乱雑に書き綴っていく
(まぁ、知った所で暗記しようと思わないし……)
「他の生徒の前じゃやらないぞ」
何も問いかけてはいないのに鷹司が答え馨の肩が小さく跳ねる
「な、なんですか…急に」
「生徒の前でやるか?って思っただろ」
鷹司の問いに頷く馨
「普通だったらこんな場所でやらないがお前は今自分の身一つしかないだろ…カバンは俺の隣にあるんだから携帯で記録も残せない」
そう言われ初めて自分の鞄が鷹司の隣にあることを知る
「自分の記憶力だけでこの量は覚えられないだろうし、お前もさして覚えようとは思わないだろうしな」
鷹司は顔を上げ人差し指と中指の間にペンを挟み肘をつき馨を見ると不敵そうに微笑む
彼に全て見透かされている様な気持ちになり馨はなんだか腹が立った
「怒るなよ」
眉を寄せ拗ねた様な表情を見せれば鷹司はまた嬉しそうな顔を見せる
あの完璧な先生の無邪気な笑顔を見た馨は不思議な感覚だった
今の鷹司の表情や声色、仕草は自分しか知らないんじゃないかとさえ感じた
(笑うとこんな顔するんだ…)
鼓動が早くなる
が、次の瞬間保健室の扉が開き棗が息を切らして部屋の中へと入ってきた
「馨!大丈夫か!?」
練習が終わってそのままの勢いで走ってきたのか色々と泥だらけだった
「棗…うん。大丈夫だよ」
「お疲れ様」
想像していた形とは違ったのか鷹司と向かい合う馨の姿を見て棗はその場に立ち尽くしてしまう
「……あ、大丈夫ならいいんだ。倒れたって言うから…その、えっと」
明らかに気が動転してる挙動を見せる棗に気をきかせたのは鷹司だった
「軽い熱中症だったから少ししたら目を覚ましたし、本人も落ち着いてるから心配するな。穂高はまず先に着替えてこい」
プリントを一つにまとめ席から立ち上がり棗と一緒に部屋を出ていこうとする
「白雪、お前はここで待ってろよ」
馨は少しギスギスした空気を感じ取り、黙って頷く
そして2人は馨を残し保健室を後にした
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