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葛藤
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無言で廊下を歩く棗と鷹司
保健室からだいぶ離れた辺りで棗が鷹司に向けてこう告げる
「馨に何にもしてないだろうな」
その低く唸る様な声はまるで飼い慣らされた番犬が主人を守るために威嚇するかのようだった
そんな棗を鷹司は横目で睨むと冷たく言い放つ
「お前には関係の無いことだろう。まぁ…中途半端なお前がいくらあいつを守ったとしてもあいつを番する事は出来ないしな」
先程馨といた時との態度からは正反対な鷹司に怖じける棗だが自分も負けずと反論
「うるさい。馨に近づくな」
鷹司の足が止まる。棗が言葉と同時に立ち止まったからだ
「教師でいる限りは無理だな。残念だが」
「屁理屈だろ。んなの」
「まぁ、お前の独占欲が強いのも解るが白雪の気持ちも尊重して物事を判断しろよ」
鼻に着く言い方をする鷹司に棗は爪が食い込むくらい強い力で拳を握る
「お前がいなけりゃ…お前がうちに来なかったら全部良かったんだよ。上手くいってたんだ」
それだけ言うと棗はわざと鷹司の肩にぶつかりながらその場をあとにする
その後ろ姿を見て鷹司は溜息を吐く
(あぁ言ったがあいつ大丈夫か…)
棗の最後の台詞はなんだか不安定で危うい感じがした
着替えを終えた棗が保健室へと戻って来ると少し不機嫌そうに馨の隣に座った
「…な、棗?」
心配する馨に棗は笑顔を向けなんでもないとだけ言うと馨の肩に頭を乗せた
「急いできたからちょっとだけ休ませて…」
苦しい言い訳に聞こえるかもしれないが馨は何も言わず黙っていてくれる
棗は馨が離れず、拒まずここにいてくれることに安堵するが幼い頃からずっと一緒に育ってきているからこそ解る
馨の気持ちが自分から段々と離れていくのを…
本人は気づいてないのかもしれないが鷹司と一緒にいる時のあの顔が物語っていた
(お前の1番は俺がいいのに…)
そう思った途端、先程の鷹司の言葉が思い出される
『お前の独占欲が強いのも解るが白雪の気持ちも尊重して物事を判断しろよ』
自分はそこまで器用でもない。高校生といえどまだ子供だし取られたくないものだってある
こんな世の中を棗は恨んだ
どうして3種類の種別があるのか。カーストの中で生きなくてはいけない苦しみや何故βとΩは番になっても無駄なのか…
「…腹立つ」
棗の心の中で黒い靄のようなものが生まれた気がした
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