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二学期
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二学期
馨達の長い夏休みは終わりを告げ、蒸しかえるような暑さの中体育館での始業式を迎えた
クラスで番号順で並び、生徒達はガヤガヤと夏休み中の話題を小声でしては教師に注意を受ける
そこには鷹司の姿もあった
そんな姿を横目で見ながら馨は膝を抱えて座り早く終わる事だけを祈る
校長が壇上に上がり長い話を始め、生徒達が静かになった
(暑い…)
馨は額に滲み出る汗を袖で拭い、時が過ぎるのを淡々と待った
この夏休みの間に馨を取り巻く環境は変わった
相変わらずクラスでは浮いた存在ではあるし腫れ物扱いをする者もいるが声をかけてくれる者もいた
それに受け答えをする事自体が馨にとってはとんでもない進歩であり、棗も1層複雑な気持ちが募る
始業式も無事終え各々が教室に戻るとHRで2学期初めにある修学旅行の話を担任がし始めた
生徒達は2週間後には北海道に行けると大喜びの中馨は1人だけ無表情で窓の外を眺めていた
自分は修学旅行には行かないからだ
養護教諭と発情期と重なってしまうこと、クラスメイトとの密室の危険性を話し合って決め、馨は欠席の連絡を1学期のうちに済ませておいた
行けない事はさほど悲しくはない
(棗は行くんだっけ…)
ちらりと棗の方を向くと楽しそうに他の生徒と何処に行くか話している
(いいな…楽しそうに笑ってる…)
棗みたいな人生だったらどんなに良かったか
自分も今頃こんな風に笑って、友人達と楽しく過ごしているのだろうか…
(考えるだけ無駄だ…やめよ。)
馨は周りの声を気にしないように窓の外の景色だけに集中した
自分の転機がこの時訪れるとは思いもせず…
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