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修学旅行5
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鷹司の高校へと着いた神代は彼の顔を見ては大口を開けて驚く
「お前…それどうした」
頬の半分を腫らしそこに湿布を貼り冷やしている姿は神代が生きてきた中で初めて見る姿だった
鷹司は神代が来てくれた事に短い感謝をすると神代の問いに答える
「自分で殴った。そうでもしないと不味かったから」
自分で殴ったという単語を聞いて混乱する神代であったが鷹司が心を乱されることなんてここ最近で1つしか思いつかない為、1人で状況を理解しだす
「白雪姫にまた無理に迫ったのか〜」
にやけ顔で揶揄いながら館内靴に履き替えるが彼から返ってきた言葉は想像と違っていた
「いや…逆に襲われそうになった。だから殴ってなんとか保った」
2人の間に数秒の沈黙が流れる
「……は!?え?今、なんて言った!?」
思わず大きな声が出てしまい神代は急いで口を噤む。看守室の窓から看守がこちらを睨みつけそれに頭を下げて平謝りをすると神代は踵を返して廊下を先導する鷹司を急いで追いかけた
「ど、どういうことだよ。だってお前の事嫌ってるんだろ?」
肩からずれ落ちる鞄を背負い直しながら小走りで追いかけ問いかけると鷹司からも疑問を隠せないといった表情を向けられ思わずため息が出てしまう
「…お前、困るとすぐ俺を頼るよな。一応この学校の部外者だからな、俺」
「いい。家の力借りてるからお前の事とやかく言うやつはいない」
その言葉に苦笑することしかできない神代は話を戻すことにする
「で、お前の運命のお姫様は何があって襲ってきたんだ」
鷹司は事の経緯を神代に話しこれから1週間の間は一緒にいてほしいと提案すると彼は先程よりも大きな声を出しながら馨の容態を聞いてきた
「俺もその場から離れることで精一杯だったから」
分からないと言われ神代は納得すると弱気になっている鷹司の背中を強く叩くと先に馨のところへと行くからその腑抜けた顔をなんとかしろと言い廊下を小走りで駆けだす
(事情が事情だから仕方ないか……)
何事も起きてませんようにと祈りながら馨の居るであろう教室へと急いだ
ーーーーーー
神代が教室へと着くと中には誰もいなかった
教室外の名札を確認し間違っていない事を確認すると首を傾げる。入れ違いになってしまったのだろうかと心配にもなってくる
「……おーい」
小さな声で馨を呼ぶと教卓の下から微かに物音が聞こえ神代は歩を進めると覗き込むとそこには震え怯える馨の姿があった
馨の前までやってくると甘い香りが鼻を掠めこれに耐えた鷹司のことを心の中で褒めた
普段であれば番犬である棗が様子を察し一緒に行動をしてくれるがそれが叶わない為どうしたら良いのか困っていたのだろう。神代の顔を見るや否や知ってる顔だと安心できたのか大粒の涙をいくつも溢しながら助けを求める馨
(ありゃ。こら凄い)
まるで人格が変わり幼子のような馨を呼び寄せ教卓の下からなんとか引き摺り出すと一緒に横へと座りその小さな背中を摩り症状を落ち着かせてあげる
「よしよーし、お兄さんがきたから大丈夫だよ〜。辛いね〜」
思うように薬が効いてこない馨を根気よく宥めてやると彼は荒い呼吸を繰り返しながらも徐々に落ち着きを取り戻し始めた
(とりあえず換気してこの子の着てるもんなんとかしないとな〜)
自分の目からは具合の悪そうにしかほとんど見えない馨を見ながら神代はこの世のダイナミクスは非情だなとそんなことを考えては床に落ちたプリントを拾い茫然と眺める
運命とは時に人を救い時に残酷に牙を向く
(これから先、この子は運命をどう受け止めるんだろうか…)
自分が関与できる問題でもないことは初めから解っている。神代は薬の効いた馨に立てるかと聞き、着替えを促すと肩を支えながら人目を避けながら保健室へと運ぶのだった
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