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修学旅行 6
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そこからの日々は馨の思っていたものとはかけ離れており、教室に着くと真っ先にいるのは鷹司ではなく神代の方で授業の方も基本は神代が近くへと着き鷹司はたまに様子を観にくる程度だった
他校の教師がいて良いものなのかと疑問に思うが神代から聞くなとキツく言われているため無理に聞き出すことはしなようにする馨
どうやら神代はβの中でもフェロモンというものを感じにくい体質らしく馨と一緒に並んでいても特に充てられるといった心配はしなくていいと本人から伝えられ、現に発情期中の馨の隣にいても特に問題の起こるような事は起きなかった
「……白雪姫はさ」
「白雪です。なんですか」
授業のプリントを解きながら神代の言葉に訂正を入れ返事を返すと彼は短く謝り言葉の続きを話す
「実際あいつのことどう思ってる?」
「ど、どうってどういう……先生のことは得意じゃないです」
急に鷹司についてを聞かれ持っていたペンを落とし明らかに動揺してしまう。言ってはいけないことだったのではないかと不安に駆られ急いで落としたそれを拾い上げプリントへと視線を移す
「君らしい反応〜。……あいつの実家さものすんごい厳しくてさ。あ、これ内緒にしてほしいんだけどね」
馨の表情を見て歯を見せながら揶揄う神代だったが短く息を吐きだすと急にしんみりとした顔へと変わりその落差に馨は反応に困った
(な、何急に語らないで…)
だが彼に言ったところで止まることはなさそうと見切りをつけるとキリのいい所まで問題を解き、神代の話を静かに聞くことにする
「厳しいとかとはちょっと違うか。…うん、言うならば古典的な家系なんだけども。ほら、よくサスペンスとかでも見るじゃん遺産相続で本家の人間が〜とかあぁいった感じのが続いてる家なのよ」
「はぁ…」
神代の言葉を若干信じられない馨は首を傾げながら生返事を返す
(アニメとか連ドラとかの世界でしか見たことないからよく解らないし…)
「あいつの出来が良すぎるからすっごい家の人達があいつに執着してる訳よ。鷹司の名前は全国でも聞くほど有名な名前だし一族の中でも継がせるとしたら鷹司先生にしたいんだと。だからここで先生やってることにも当然反対してて一刻も早く本家に戻したい人物ってこと」
あまりにもスケールの大きい話についていけない馨は鷹司の顔を頭の中で思い出しながらよくいろんな所で名前を聞く鷹司グループの人間であることに驚く
(いきなり話の大きさが広がりすぎじゃ…それになんでこんな話を俺に?)
そんないっぱいいっぱいな馨を横目に見ながら持っているペンを回し話を続ける神代はとある質問を投げかける
「なのに鷹司先生は教師をやめない。…なんでだと思う?」
下を俯き困っている馨は神代の問いに顔を上げ彼の方を向くともう一度なんでだと思うのか理由を問われ模範解答のような答えを彼に言う
「教師の仕事が好きだから…?」
その解答に神代は持っていたペンをこちらに向けると見たこともないくらい真剣な表情で空で不正解の意味を込めばつ印を馨の顔の前で描いた
「不正解……とも言い切れないかもだけどね。俺の知る限りあいつにとって教師の仕事は一つの手段でしかないよ。でも辞めない、本当にロマン主義者すぎて見てるこっちがむず痒いわ〜」
神代は片耳にペンを挟むと大きく伸びをし解答の続きを馨に聞かせ、その解に耳を疑った
「…あいつはね、"運命の番"ってやつを子供の時からずーっと信じてるの。……そして君に出会った」
人差し指で馨を指差し面白そうに笑い出す神代は椅子から立ち上がると学校のチャイムが校内へと鳴り響く
「ははっ。急にそんな話されてもって思ってるでしょ」
「…はい」
まさかの鷹司が有名企業でもある鷹司グループの御曹司で次期当主候補で本人は運命の番を探すために教師の仕事を続けているだなんて誰が想像しただろうか
(あの先生が運命の番を探してる…?)
馨は神代の言っていることが果たして本当なのか問いたくなった
「じゃあ遊んでるって噂は…?」
「まぁ、αである以上そういったことには困らないだろうし、実際遊んでたのは確かだと思うぞ」
そう神代に言われ自分でもなぜだかは解らないが胸の奥が棘を刺された様にチクリと痛む
「でも君を見つけてからは遊びでそういう事したりは一切してないって聞いたぞ」
「え…?」
驚き伏せ気味になっていた顔を上げ教室を後にする神代を見ると彼は馨の顔を見て一瞬驚くとにんまりと口角を上げて笑う
「姫のいい表情(カオ)みーちゃった」
馨は急いで目線を逸らすと両手で顔を覆った。自分は今、神代にどんな顔を見せたのだろうか
「先生呼んでくるからいい子で待っててね〜」
ニヤニヤと笑いながら教室を去っていく神代の言葉など最早聞こえていない馨は自分の中に抱いた感情に問いかける
(神代さんの言葉にちょっと安心したのはなんで…だって俺は、俺が好きなのは…)
俺が本当に好きなのはどっちなんだ…?
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