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40 境界線がなくなった日
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遙side
「悪いココ。今日は帰るの遅くなる。夕飯も作っといたから、温めて食べといて」
朝食を食べ、急いで上着を着ながらそう告げる。
「う、うん…」
それを聞いた途端シュンとして、明らかに落ち込んでいるのだとわかる。
『俺がいないとダメ』みたいなのを勝手に思い込んで
自意識過剰になってしまうのも、こういう所を見せてくるせいだ。
「いってらっしゃい…」
「おう、いってきます」
切なげな声音が俺の心をきゅっと締め付けた。
手から気持ちを伝えるようにして、いつもより優しく頭を撫でた。
後ろ髪を引かれる思いで玄関を出た。
〝朝夕は毎日一緒に食べる〟っていう約束してたのに、
それを決めた俺が真っ先に破るとか…。
自分でも無いなと思う。
あー早く帰って来たいけどな…。
そう思うのもココが家に居るようになってからだった。
以前までは、誰もいない家に帰るのも大学とのエネルギーみたいなもののギャップが激しすぎて、余計に疲れていた。
たくさんの人のいる賑やかなところから、急に何もなくなって物音一つしない所に身を移すと、とんでもなく寂しくて孤独を覚えるのだ。
だから、バカの一つ覚えのように酒を飲み、夜の街へと繰り出して気を紛らわしていたのだった。
なのに今では家に帰るのが何よりも先決で、出来るだけ誘いは断っていた。
人って変わるもんなんだな。
ココがいるおかげで毎日が楽しいとさえ思う。
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