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気弱な少年
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【倉橋 祐貴】
ケータイが鳴った。
メールが来たようだ。嫌な予感がする。
このメールの送り主が、どうか、あの人じゃありませんように。
先ほど、学校から逃げるように家へ帰ったあとすぐさま自室にこもり、一人で膝を抱えていた少年。ケータイの震えを鬱陶しそうに見つめる。よっぽど泣いたのであろう。まぶたが赤く腫れている。
柔らかい髪質のサラサラの黒髪は、今は汗ばんで額へ張り付いていた。
震える手でケータイを手にとったあと、チカチカ光る画面を見て眉をひそめた。
【新着メール1件;佐木 光】
確かにそう表示されている。
「あぁ、やっぱり…」
弱々しい声で小さくつぶやく。
一度手は止めたものの、内容を確認した。
【いますぐあのベンチのトコにこい】
たった1行。点も丸もない味気のない1行であった。
メールにはなにやら画像が添付されており、それに気がついた少年は、恐る恐る画面をスクロールしていった。
「……っっ!!!」
思わず手にしていたケータイを投げてしまった。スクロールした先に写っていたのは、思い出したくもない光景。
学校の裏庭。人目のつかないところで今日無理矢理させられた自慰行為の真っ最中の画像であった。
目に涙を浮かべ、たくし上げたシャツを歯でギリギリと噛んで快感をこらえている、自分。真っ赤な顔で必死に自身を慰めている、自分。
少年は、すぐさまこのメールの意図がわかった。
【すぐに来ないと、これをばら撒く。】
きっとそう言いたいのだろう。
佐木 光(さき ひかる)。その存在を恐れると同時に、どこか放っておけなかった。でも今は恐怖の方が勝っていた。少年の目からは一筋の涙がながれおちる。それを制服の袖で強く拭ったあと、Tシャツとジーパンに着替えケータイを握りしめて家を飛び出した。
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