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傷だらけ②
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しかし、振り返ったその顔を見た時、僕は思わず言葉を失った。
「……!!!!」
佐木の顔が痛々しく腫れ上がって、アザだらけになっていたのだ。
暫く泣いていたのだろう。涙と鼻水でグチャグチャになっている。
その顔を見られたくないのか、腕で顔を隠すように覆う。その腕にも傷がある。火傷のような痕や擦り傷。
よく見ると、着ているシャツはボロボロで所々破れていた。
「さ、サキくん…」
明らかに大丈夫では無いであろうその様子に、なんと声をかけたらいいのか分からなかった。
「…どうしたの、ソレ、何があったの?」
話しかけても、返事はない。
ただ泣きじゃくるだけで、言葉を発する事はない。
心配になり背中をさすろうとするが、手を止めた。シャツ越しに血が滲んでいたのだ。傷口を撫でるようなことは出来無い。背中に伸ばした手は、そのまま空気を掴む他ならなかった。
「…病院、行こう?ひどい怪我だよ?ねぇ、傷口、膿んじゃうかもしれないし」
それを聞いて、イヤイヤをするように首を振る佐木。
「足、怪我してる。歩けない?」
「…行きたくない」
嗚咽を無理矢理抑えこみ、声を絞りだすようにしてそう答えた。
何があったのかは分からない。
けれど、昨日も頬に一つあった痣。そして今日の不審な無言電話とらしくないメール。
すべて関係している事は確かだ。
「…とりあえず、僕の家おいでよ。手当てするし、話も聞くよ」
「……別に、いい」
「どうして?歩けそうにない?」
「ちが、う」
「僕の家、来たくない、とか?」
「そうじゃなくて!」
「…別に、大丈夫だから。心配とかいらない!こ、転んだだけだし!そ、それに、何かあったとしても、お前になんか誰が言うか…だから…放っとけよ、もう…」
叫ぶような勢いで言い放つが、瞳からはいくつもの涙がこぼれ落ちていく。
「話したく、ないんだ」
宥めるようにそう言うと苦しそうに歪んだ顔がゆっくり俯き下を向いた。
話せないほど、辛いことがあったのだろう。
「分かった。もう何も聞かない。」
ただでさえプライドが高く意地っ張り。誰かに相談なんてしたがらないはずだ。
それを悟った上での僕のお願い。
「だけど、手当てだけはさせて」
受け入れて欲しい。
合わないままの視線。だけど諦めない。じっと見つめて逸らさないでいた。
「ね、お願い」
もう一度声をかける。
その言葉にゆっくり顔を上げた佐木の頬に、一筋の涙が伝った。
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