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ふたりぼっち③
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「バンザイ、して」
僕がそう言うと、素直にいう事を聞いた。
正面からだと恥ずかしいから、背中側に回り込み、ケガをしている部分にあたらないよう、Tシャツを頭に通す。
指先に少しだけ触れた髪の毛の感触がくすぐったくて暖かい。
(…いい匂い)
ほんのりサキくんの匂いがする。
そのとき、僕はどうかしていたのかもしれない。
匂いにつられたかのように、心の奥底に眠っていた欲望が疼き出した。
ーーー少しくらいなら。
佐木の匂いに引き寄せられるようにその背中にゆっくりゆっくり顔を近づけていく。
触れるか触れないかのギリギリの堺。そこから肩にかけて、味わうように息を吸った。
「っ………はァ」
自分でも興奮しているのがわかる。
佐木は漫画に夢中で気づいていないのか、はたまた反応する事すら面倒なのか。
微動だにしない。
せめて、止めろとヒトコト言われれば、これ以上何もせず彼の体から離れることが出来る筈なのに。
どうしよう。止まらなくなりそうだ。
下半身がジンジンと熱くなり呼吸が乱れる。
このまま腕を絡めて抱き寄せてしまいたい。
胸と胸を合わせ、お互いの温もりを重ねあいたい。
無様で、不器用で、愛というにはまだ幼すぎる感情。その全てを、今ここでぶちまけたい衝動に駆られる。
見て、聞いて、受け止めて欲しい。
泣きたいくらいの愛しさを。
「ーーー佐木くん、僕…」
自分でもビックリするぐらい欲情した声が出た。吐息混じりの掠れた声。
「………倉橋??」
グラスの中の氷が溶けて、カラン、とみずみずしい音をたてた。
その時
「ーーーちょ、ちょっとトイレ!!」
我に返った僕は、大声でそう叫んだ。
「えっ?おい…」
そしてそのままTシャツを首に引っ掛けたまま唖然とする佐木をおいて、急いで部屋を飛び出した。
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