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無意識②
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食事を終えたあと風呂に入り学校の宿題をする。
僕が宿題をしている間に佐木は軽くシャワーを浴びてきた。怪我をしているものの風呂に入らないのは気持ち悪かったようだ。
上がってから美代子に包帯を巻き直してもらい、僕の部屋のベットに横になる。どうやらそこが定位置らしい。バサッと大きな音を立てて布団をかぶる音が聞こえた。
「お風呂、どうだった?傷染みたでしょ」
「んー。」
僕は、プリントの問題を解きながら話しかける。なるべく手は止めないように。
二人の時間…というと何だか違うがとにかくやるべき事は終わらせてから二人でのんびりしたかった。
「明日、学校一緒に行こうね」
「んー。」
「そういえば、制服とカバンお家におきっぱなしだよね?学校行く前に取りに行かなきゃね」
「んー。」
「サキくん?」
先から同じ返事を繰り返してばかりの彼を不思議に思い、そちらに目を向ける。
そこには、布団から顔だけ出してスースーと寝息を立てる彼がいた。
先から動きっぱなしだったシャープペンシルを机に置き、なるべく音を立てないように佐木の顔を覗きこんだ。
「やっぱり、寝てる」
それはもう、気持ちよさそうに眠っていた。
頬に残る痣は痛そうだけど、それさえ無ければ本当にただの中学生だ。
まぁただの中学生というのは、金髪にもしなければピアスの穴も開けないのだろうけど。
初めて見る佐木の寝顔。
つい最近までこの人にいじめられていたなんて思えない程幼くて思わずジーッと見つめてしまう。
顔を近づけると、ほんのりシャンプーの匂いがした。僕と同じ物を使っている筈なのに、その匂いが新鮮に思えて仕方ない。まだ少し濡れている前髪を指で軽く撫でる。
「寝ちゃったんだね」
「…ん」
「髪の毛乾かさないと、風邪引くよ」
「‥んん」
話しかける僕に、寝てるはずなのに律儀に頷き相槌を打っている。
「ふふ」
「…ん」
寝ぼけているのか、それが癖なのか。
とにかく何でも返事をする佐木が面白くてつい遊んでしまう。
「サキくんは、猫に似てるね」
「…ん」
「目がクリクリしてるところとか」
「ん」
「やっぱり自分でもそう思う??」
「んん」
「ふふふっ」
素直に頷くのが本当に面白い。いけないとわかりつつも、あとちょっとだけ…と言い聞かせながら話しかける。
「ね、サキくん」
「…ん」
「大好き」
「…ん」
「サキくんは…僕のこと…好き?」
「…ん」
「へへ、嬉しい…」
思わず笑みが溢れる。
どうせ聞こえてなどいない。
意味を理解してないし、その返事は寝言だし。そこには何の感情もない事は明らかなのに、僕の心は完全に舞い上がっていた。
「じゃあ、さ…」
次の質問を思いついた時、緊張で思わずゴクリと音を立てつばを飲み込んだ。
こんなに躊躇うのなら、言わなければいい。
こんな遊び辞めて、宿題して、僕も早く寝るべきだ。明日も学校があるんだから。
それでも。
ちょっとした出来心。
僕は頭に浮かんだそれを、はっきり言葉にした。
「キス、しても…いい?」
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