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翌朝③
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弁当を受け取った後、急いで支度を済ませようやく家を出た。
「行ってらっしゃい」
「行ってきます」
玄関で二人に手を降る美代子に僕は手を振り返すが、サキくんは照れてるのか何の反応も見せずさっさと歩き始めた。
「あ、待ってよ」
足早に歩く彼の背中を追いかける。
「歩くの遅せえよ」
「サキくんが速いんだよ」
朝っぱらから悪態をつく彼が、僕は愛しくてたまらなかった。ツンケンした態度が、いじけたような表情が、どうしても嫌いになれない。
ふたりで歩く時間がなるべく長く続くようにゆっくり歩きたかったけれど、そんな僕の気持ちなど知るはずも無いサキくんは早足でどんどん進んでいく。
曲がり角を曲がり、家が見えなくなった頃。
唐突に口を開いた。
「ーーー俺さ。昨日、夢見たんだよね」
「…夢?」
首を傾げる僕に、黙ってコクンとうなずいて見せる。
「どんな夢?」
「当ててみて」
何だろう。普段とは違う場所で寝たから、落ち着かなくて怖い夢でも見たのかもしれない。
そう思い、「怖い夢?」と尋ねると首を横に振った。
「悲しい夢?」
「違う」
「んじゃ楽しい夢!宝くじ当たるとか…」
「違う」
それから更に頭をひねり、思いついた事を全て口にしてみたけれど、帰ってきた言葉はどれも「違う」だった。
一向に正解の出ないクイズにやる気を無くし始める僕を見て目を細める。
「知りたい?」
口元に薄っすら笑みを浮かべ、意地悪そうに言うその表情に、妖艶さを感じてしまい思わず目を逸らす。
「教えてやるよ」
おそらくだけど、朝っぱらからエッチな事でも言って僕をからかうつもりだろう。
そうだとしたら、なんてつっこもうかなぁ、なんて考えているとサキくんは人差し指で自分の唇を指した。
「………なに?……くち?」
それを見てキョトンとする僕に、そうじゃない、と首を振った後、低い声で言った。
「キスだよ」
「キスする夢。」
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