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理想
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そんな俺の考えなど察することもく、倉橋の口が動いた。
「理想って、誰にでもあると思うんだ。」
「サキくんにも、僕にも」
「でもね。"だったら"の先に、幸せはないんだって。」
「…は?」
言っている意味が分からなくて首を傾げる。
「こうだったら、とか、ああだったら、の先に幸せはない。昔、お母さんが言ってた」
「…」
ピンとくるような、こないような発言。
イマイチ反応出来ないでいる俺に、倉橋は優しく微笑んだ。
「僕はさ、今のままのサキくんでも、好きだなぁ」
好き、という言葉に身体がぴくりと反応する。
まっすぐ向けられた瞳と視線がぶつかる。
「……な、な…っ」
今まで生きてきて、一度も言われたことの無い言葉だった。反応に困り、つい変な間をあけてしまう。
しかしそれを悟られぬよう、あわてて次の言葉を探した。
「ば、馬鹿じゃねえの?恥ずかしげもなく、よくそんな事いえるよな!」
そう言う俺に、倉橋はハッとした後、平謝りする。
「ご、ごめんねっ!気持ち悪いよね僕!ほんとごめん!」
倉橋は戸惑う俺より、更にあたふたしている。
そして、聞かなかった事にして!と続け、照れ臭そうに頭を掻いた。
「あぁ、僕、ホント何言ってるんだろ…」
そう言って顔を赤くする倉橋。
手のひらでほっぺを軽く叩いたり、ブンブンと頭を振ったりして、自分なりにどうにか落ち着こうとしている。
焦ったり謝ったり恥ずかしがったり。本当に忙しいやつだと思う。
でも。
そういうところも、俺は
羨ましくてたまらなかった。
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