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記憶
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私(ぼく)は辛くない。
あなたを想って最期を迎えられたから
けど僕(わたし)は涙を流す。
一人遺されたあなたが…
自分を責めるのを知っているから……
いくつもの感情が私(ぼく)を襲う
僕(わたし)は誰なのだろう
私(ぼく)?
僕(わたし)?
そうだ―――…僕(ぼく)だった…
?
そっと意識が浮かび、段々と視界が明るくなっていく…
小さい頃から何度も経験している感覚
だけど何度経験しても慣れない感覚が僕を支配し、そして段々と消えていくーー
あぁ、また僕は夢を見たのだ。
もう一人の僕であるエウディケの最期の日を…
?
感覚が戻りつつある頃、金縛り状態が少しずつ無くなっていくのを感じながら、僕はそっと瞼を開けた。
けれど…全身が辛くて、頭が痛い
頭痛が治る訳では無いのだが、僕は気怠い腕を持ち上げて額に手を当てた。
目線だけ窓の外に向けてみれば、まだ外は薄暗かった。
気怠い体を動かし空を見上げてみれば…空には太陽の姿も月の姿も無い。
どうやら今は…暁方(あかつきがた)の様だ
起きるには早過ぎるが、寝るには難しい時間
「こんな時間じゃ、二度寝は無理だなぁ…」
僕は素直に二度寝を諦めると、ベットから起き上がり、地面を確かめる様にゆっくりと足を降ろした。
?
お気に入りのカップから紅茶の良い香りが漂ってきて、自然と口元が綻んだ。
僕は紅茶の香りを楽しみながらそっとカップに口をつけ、紅茶を口に含む。
…うん、美味しい。
我ながら素晴らしい腕前である。
思わずホッと息をつく。
「久々に見たなぁ…」
…あの夢を最後に見たのはいつだっただろうか?
恐らくこの学園に入学する前に見たのが最後だった気がするが…詳しくは覚えていない。
雪に飛び散る赤が、とても印象に残る夢…
最近見ていなかったので油断していたのか、一瞬…自分が誰なのか分からなくなってしまった。
「いつか夢に食べられちゃいそうだなぁ…」
自分の言葉に心のどこかで同意を示す。
だって、あの夢を見る度に心に重く響くのだ。
エウディケの想いとあの人の叫ぶ声が…ーー
僕を壊してしまうのではないかと思うぐらいに、強く…
「別に…見るのは嫌じゃないんだけどね…」
そう、別に嫌じゃないのだ、ただ…
ただあの日を夢で見ると、翌日は体が辛く、頭痛が酷いだけ…そう、それだけ。
僕はそっと呟き苦笑すると、再び紅茶を口に含む。
そう、嫌な事ばかりでは無いのだ。
夢の中だけとはいえ、懐かしいあの頃に戻れるのだから…
前世の僕であるエウディケが生きていた時間
(とき)にーーー
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