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「はい、なんだかんだ結構待たせちゃったね」
マグカップをふたつローテーブルに置きながらマスターはおれの向かい側のソファに座った。
「ありがとうございます…」
マグカップからはゆらゆらと湯気がたっていた。おれはゆっくりひとくち飲んだ。
「その…さっきはごめんね。勝手にいろいろ…俺は部外者なのに」
慌ててマグカップを置いた。
「えっ、そ、そんな謝らないでください!もとはといえばおれなんかがマスターに相談なんてしたから…マスターの優しさに甘えてたから、」
「理汰くん」
急にマスターが真顔になっておれの顔を真っ直ぐ見た。
「はいっ」
思わず大きな声で返事をしてしまう。
「…俺はね、親切のつもりで君の相談を受けていたわけじゃないよ」
「え…」
「最初は、確かに泣いてる理汰くんを可哀想だと思って話を聞いていたけど…途中から、俺はずっと幸と別れさせようとしてた。……なんでか分かる?」
「え、あ、あの、」
「理汰くんの事が好きになったからだよ」
目を見開く。体が固まるってこういうのを言うのか。
マスターが、おれのことを、すき?
すきって…す、…え?
「すき、」
「うん」
「…そ、んな、ばかな、」
「好きだよ」
「ますたー、」
「君のことが好きだよ」
ぽかんと口を開けてしまった。
マスターはふぅ、と息を吐くと
「今この状態で言うのはまずかったかな、理汰くん、理解してないでしょ」
「あ…えぇえ、」
「変な声出てるよ」
「う、」
「…いきなり、こんなこと言ってごめんね。混乱させちゃうっていうのは分かってたんだけど…どうしても伝えたかったんだよ」
「ま、ますたー…」
「理汰くん…“俺なんか”なんて言わないでほしいんだ。さっき幸に言われたことからそういう風に思っちゃうのかもしれないけど、理汰くんはいい子だよ」
顔が熱くなるのが自分でも分かった。
こんなに自分を褒められ?なんていうの?良く言われることなんてない、から。だと思うけど
こんなにカッコイイ完璧な人に言われたらドキドキしてしまう。
「ま、マスター、もう、分かったのでやめてください…」
「本当に分かった?聞いてませんとか言わないでね?」
「は、はい…」
「よし。……ところで」
いきなりマスターの表情が明るくなった。
「全然違う話なんだけど、理汰くんに頼みたい事があるんだ」
「え、なんですか?」
「今日、ランチの話したよね。で、理汰くんが言ってたように、多分俺だけじゃキツイと思ったんだ」
「はい」
「理汰くん、バイトに入ってくれないかな?」
「えっ、」
「入れる日だけでいいんだ。俺が慣れるまで。…他のバイトとかあるんだったら断ってくれて全然いいんだけど…」
「いえ、むしろ、いいんですか?」
実は、丁度バイトに入ってたお店を従業員削減だからとかいって、クビにされそうだったところだった。時給もその辺のコンビニの高校生より安くなっていた。
「入ってくれるってことでいいの?」
「はい!ぜひ!毎日でも入ります!」
「お給料とかはまた相談するね。ありがとう」
マスターがにっこりと笑った。……どこか、いたずらっぽい笑顔に見えた……
「じゃあ、これから覚悟しておいてね。」
「へ?」
「毎日、理汰くんのこと口説くから」
…………まじですか??
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