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「理汰くん、ケータイのアドレスと番号教えて」
閉店後、マスターはおれをカウンターに座らせてカフェオレを作ってくれた。…さっきまでの割とシリアスめの空気はなくなっていた。
「あ、はい。分かりました…えと赤外線使えますか?」
ごそごそとポケットを探ってケータイを出した。マスターがおれの隣の椅子に座る。
「うん、使えるよ」
…隣に座った時の距離の近さには触れないでおこう。かなり密着してるけど。
「じゃあおれが送りますね」
ケータイとケータイをくっつけて、おれのデータを送った。
「あ、きたきた。俺の番号メールするよ」
「はい」
マスターはメールを打ち始めた。…そしてなぜだかおれから少し離れた。
うち終わったのか、ケータイから視線を外してまたおれに近づいた。なんかニコニコしてる…いや、ニヤニヤ…
不自然な笑顔を浮かべるマスターを見ていたらおれのケータイが震えた。マスターからのメールだ。開いてみる。
……………
一気に顔が熱くなった。
「マスター…こういうのやめてください…」
「ドキッとした?」
ふざけた風に声を出して笑うマスターをにらむ。
メールには、電話番号と、
すきだよ、という文字。
「ドキッとしたとかいう問題じゃなくてですね…こういうのは、その、」
なんて言ったらいいかわからない。
「こういうのは直接行ってもらいたいタイプ
?」
「ちが、」
「好きだよ、理汰くん」
「??????やめてください!」
「…じゃあ、早く俺のこと好きになって」
「!」
「さっきは理汰くんが幸のこと好きなら…それで理汰くんが幸せならとか言ってみたけど、やっぱり無理だね。諦めるとか」
冗談ぽくわらってるけど、声が「冗談ではない」と言っていた。
「俺のこと好きになってくれなくても、側にいてくれるなら幸せにするよ…ってずるいかな?」
「…ず、ずるいです…そんなのっ」
どうして、マスターはこんなにおれのことを甘やかすんだろう。好きでもないのに、幸せにしてもらうなんて、そんな事出来ないのに。そんな状態で好きにならないなんて、絶対あり得ない…少なくともおれは。
「…こんなこと言ったら、側にいてくれなくなるの?」
「そんな、」
「ずるいことを言ってでも理汰くんといたいんだよ」
カウンターにおいてあるおれの右手をぎゅっと握った。
どきっ、とした。
絶対今顔赤い!
「えっと、あ、の、ランチっていつ頃始めるんですか?」
話題をそらす。手を離してもらおうとにじにじと指を動かしてみたけどさらに強く握られるだけだった。
「理汰くん」
名前を『言われた』
呼ばれたわけじゃない。言われた。
更に顔が赤くなる。
この前までこの人に幸くんのことを相談していたなんて。信じられないし、あの時はこんな風になるなんて思ってなかった。
「パスタですよね。おれ食べてみたいです。この前作ってくれた朝ごはんも美味しかったし、マスターのランチ絶対人気に…」
「理汰くん、」
ずいっとマスターの顔が近づいてきて、視線が絡む。
おれの口がぴたりと止まる。さっきまでペラペラしゃべってたのに…
なんで、こんなドキドキしてんの?
つい何日か前までおれは幸くんのことで頭がいっぱいだったのに、
今はマスターばっかりだ。
「理汰くん…キスしていい?」
甘い声に、全部が溶けてしまいそうだ。
おれ、こんなに惚れっぽかったのか?
かっこ良くて優しそうだったら…マスターは実際に優しいけど…誰でもいいってことなのか?
あぁだめだ。
ちゃんと、だめって言わないとだめだ。
流されてる。きっとこれは流されてるだけ…
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