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クラスメイトの優しさ
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ーーーーざわざわ
「……俺ら、なんかしたか?」
美咲が口を開いた。
「……いや…なんもしてないと思う、けど」
授業中に遅れて入ってくるやつなんか沢山いる。そんなの皆いっつも見てるのに、俺らが入った瞬間にクラスの空気が変わった。
俺と美咲を指差してひそひそ話してる女子、ただただなにも言わずガン見してくる男子。
一体なんだって言うんだ。
ぐるぐる考えてた俺らに、1人が話しかけた。
「お前らって、付き合ってんの?」
「…………は?」
その時、一瞬だけ時間が止まった気がした。
なんで…なんで、そんなこと。
なんで、ばれた?どこがで聞いた?
つか、皆ざわついてるから、皆が知ってる?
いつから、いつから知ってる?
皆が俺らを見てる。
いやだ、いやだいやだ。
俺らが付き合ってることなんて、言うつもりはなかった。てか絶対に言わないつもりだった。だからばれたくもなかった。
男同士、で付き合ってるのなんかばれたら、絶対みんな引く。つか、気持ち悪いって思われる。俺だって、自分が美咲と付き合ってなくて、同性愛の人とか見たら引くかもしれない。それがクラスメイトだったら余計に。
その引かれた側。それが今の俺と美咲の立ち場。
1番恐れてたこと。それが、突然起こった。
人間はどんな風になるのかと思ったら、呆然としてなにも考えられなくなる。頭がショートして、なにも考えられない。いや、考えたくない。この場から逃げたい。それしか思ってない。
ただでさえビビリの俺だから、ただでさえ人見知りの俺だから、この場を乗り切るコトなんてできなくて、上手いごまかしの言葉なんかでてこなくて。
時間が経ってもみんなの視線は俺たちにある。静かな空間に時計の針の音が聞こえる。
どうすれば、どうすればいい、どうすればどうすればどうすれば……
「……うん。付き合ってる、けど。」
教室に美咲の声が響いた。
驚いて美咲の顔を見ると、いつもと変わらないような普通の顔で、自分の言ったことがどれだけ凄いことかもわかってないよな感じ。
「み、さき……?なんで…」
「だって、本当のことだから」
「やっぱ?」
美咲のあとに続いて先ほどの男子が言った。
あぁ、これで、終わった…。
すると、俺の肩に手が置かれた。
「だと思ったんだよ!前からさ、仲良いとは思ってたけどよ!いやぁ、なんかお前らだと男とかあんま関係ない感じだよなー。さっきもさ、悪気はなかったんだけどよ、お前らがちゅーしてんのを見てしまったんだけどさ、キモいとか全然思わなかったんだよな〜。むしろお似合い、みたいな?つか、いつから付き合ってんだよ!はよ言ってくれりゃあ良かったのになぁ。」
「まじ?見ちゃったわけ?声けろよ〜。恥ずいじゃんww」
「いや!あのタイミングで話しかけられるわけねぇだろ!」
「確かになww」
「え、えっと……」
皆が笑っている。
あれ、みんな、引いてない?
むしろ、お似合いって…。
「ほら、裕、みんな歓迎してくれてんだぞ?お礼言えよっ」
美咲が呆然として居た俺に声をかけた。
確かに、歓迎してくれている…。
「あ、あり、がとぅ…」
「いーえっ!」
まだ自体を把握できてない俺に、先ほどの男子が元気の良い返事を返してくれた。
みんな…、引かないの?
気持ち悪がらないの、、なんで?
「…みんな、きもち、悪くない…の?」
あたりは静かになった。
そして、
「はあ?お似合いだっつってんだから、きもいわけがないだろ!それに、友達に好きな人ができて、そいつが幸せなんだ!たとえ誰が相手でも気持ち悪がるやつなんて、ここのクラスにはいねぇよ。」
皆からは「そーだよ!」とか「おめでとー!」とか「リア充かよ!」とか、俺たちを肯定する言葉は聞こえなかった。
そのことが、すごく嬉しかった。
おれは皆の優しさが嬉しすぎて、堪らなくなって、笑ながら泣いてしまった。
「みんな…ありがとー……」
その後もクラスからは俺たちに対する、お祝いの言葉や優しい言葉が飛び交っていた。
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