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死が二人を分かつまで~パラレルペダルT2~R18腐二次創作T2その愛と死
ピークスパイダー~R18腐弱虫ペダル二次創作手嶋目線、巻島一大事
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フランスに来たついでに、巻島さんに会えたらと、イギリスに渡った。
巻島通商。
電話、メールしなくても、巻島さんか小野田、どっちかはいるだろう。
やべ。
考え足んねえ。
どっちか、はありえねえ。
両方いるか両方いないかだ。
だよな、ー。
左手くすり指で、プラチナの指輪がきらりと光った。
でも現実は違った。
巻島通商には小野田だけがいて、目泣き腫らしてて仕事なんか、全然手についていなかった。
「手嶋さんっ、手嶋さんっ」
歓迎の涙かと思ったがチト違う。
「何があった」
街ではヘンディ王子の30回目の謎生日を祝っている。
第二王子ではあるけれど、美貌ものごし亡き王妃によく似て、国民の誰もが愛している、いわば国家的アイドルだ。
この間までは女優と浮き名を流していた。
そして今は…
巻島さんのお兄さんは、完全に諦めていた。
「俺が悪いんだ。俺がイギリスに呼んだから」
「…」
「それともあいつに自転車を、やめさせなかったのが失敗か…」
「…」
小野田は泣いてて全く言葉にならない。
俺たちの前にはうっすらホコリをかぶったTIME。
どれほど前から姿がないか、ひと目で分かる物証だ。
「大使館には話したんですか?」
「向こうから来た。諦めてくれだと。離婚の可能な国教会でも、アチラの方は公には出来ねえらしい。お遊びならいいんだ。ゴシップ紙はにぎわせとけっていうお国柄だからな。だが、マジだと、王室的にヤバい」
「子孫絶える訳ですからね。でも、何で、よりによって巻島さんなんだ」
玉虫の髪、細長い手足。
少し妖しい二つのホクロ。
箱学の顧問にも、F工業の顧問にも、変な目線投げられてた。
巻島さんが早々に日本離れたのも、実はその辺も一因だったんだ。
外国で、シュミで乗ってる限りは大丈夫だろうと思ってたのに…よりによってこんな…
思いに耽っていた俺に、お兄さんは切り出した。
「小野田を、連れて帰ってやってくれないか」
「え?」
「人質は二人もいらない。小野田くんには日本で自由に」
「やですっ! 僕巻島さんのそばにいます! ここにいたらたまに電話もかかるし」
と指さす璧に、クラシカルなデザインの、固定電話が取り付けられている。
握りの部分の細い、スタイリッシュな電話器…
「その電話一回に対し、裕介がどんな代償を払ってると思うんだ」
「でも、でも…こんなのおかしいですよ!」
事情は丸のみだ。
王子は巻島さんを見染めた。
東洋の緑色の蜘蛛。
坂を美しく登る蜘蛛。
王子は採集し、裕福さんと小野田を拘束しない人質として、巻島さんを押えているのだ。
「わかりました」
「手嶋さんぼくは!」
俺はいきなり小野田に手刀した。
坊やちゃんは幸い一発でノビてくれ、その様を見守っていた裕福さんは深々頷いた。
「このまま救急搬送出国にしよう」
「お兄さんは…」
「俺は…兄だから…」
俺は思わず拳を握ったが、兄上は釘を差すのを忘れなかった。
「何もするな。相手は国家権力だ。約束してくれ。何も…」
俺は頷くしかなかった。
日本に連れ戻したことで、小野田は俺を怨んでる。
怨まれるのは構わない。
不甲斐ない、と俺も思う。
でも今はまだ、俺らは弱い。
雌伏しなければならないときもあるんだ。
でももちろん、このままではおかない。
総北自転車競技部の名にかけて、俺は巻島さんを助け出す。
必ずだ。
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