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-黒澤side-
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…あいつが居なくなってから7年。あいつがまだどこかで元気に過ごしているのなら、当時の俺と同い年になっているだろう。
なんだかんだで32歳になった俺だが、落ち着くどころか相変わらず毎日浴びるように酒を飲んでは、煙草の吸殻を灰皿の上に山積みにする日々。流石に落ちぶれ過ぎだと自覚している。だけど、これも全てはあいつのせいなのだ。
この体たらくぶりを見れば、あいつはまた呆れた顔をして俺の身体を心配してくれるのだろうか。…そんな有り得ないことを考えながら、ライターを手に取り煙草の箱をもう一度開けた。
「なんだ、もうなくなったのかぁ?っち。面倒だが買ってくるとするか。」
テーブルの上には空の缶ビールと出来合いもののゴミ、少し歩けば洗濯前の服が散らかっていてその上を踏んで歩く状態だ。こんなやつが高校教師だなんて、ほんと笑えるよな。この荒れ様じゃ、指導される側だっての。
…『玉置明』が俺の前から居なくなって、音信不通となってもう7年だ。そろそろ忘れたっていい頃だろうと自分でも思う。だけど、どうしてもあの日の約束を、忘れることはできなかった。
『卒業したら…僕と、付き合ってください。』
もともと男なんか興味もなく、同性愛なんてまっぴら御免だった。ましてや生徒に手を出すなんて禁忌にも程がある。
普通に女が好きだった俺は、それなりに恋をして、明がいない間に異性と結婚だってした。だけどそれもあの約束に囚われたせいで、たったの3ヶ月で離婚届を出す始末だ。呆気なくバツイチとなった俺は、相変わらずその約束を胸の奥に秘め、高校教師を続けている。
音信不通となった後、心配になった俺は一度明の家に足を運んだが、もう引っ越していた後だった。ちょうどその頃だろうか、俺も当時勤めていた高校から転勤となり明との関係が完全に途絶えた。
もちろん、明の担任をしていたため明が受験した大学にも問い合せた。少し前に違う大学に編入したという情報は入手したが、違う高校で勤め始めていた俺には、個人情報保護の為、編入先を聞くことは出来なかった。
このとき、ようやくもう二度と会うことは無いのだと悟った。それと同時に、もう恋をすることも無いのだろうと…。
…本当に好きだったのだ、明のことが。
「不毛だよなぁ…恋ってもんはよ。想うだけ馬鹿みてぇだ。」
この歳で何言ってんだかと自分を嘲笑しながら、7年前の事に思いを耽り、買った煙草をもう一度口にくわえた。
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