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流れ流され…
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「雨宮さん?」
じっとりと背中に汗をかく。
(…いや…別に見られてもいいんだよな?)
それても顔を上げれなかった。
幸希は心臓の音が高鳴り、苦しさにぎゅっと目をつぶった。
「雨宮さん、どうしました?」
左肩を押されたのと同時に押された左肩の腕に強い力がかかった。
「ちょっ…何だい、君は?」
柏原の低い声がして、幸希は目を開いた。
一瞬、雨の音だけしか耳に入らなかった。
それは目の前にいる男が自分の腕を掴み、雨に髪を濡らしながら立っていたからかもしれない。
「…。」
勝谷は何もいわずにただ幸希を見つめていた。
「君、離しなさい!」
勝谷は手を伸ばしてきた柏原に鋭い目を向けた。
「なっ…。」
怯んだ柏原を一瞥した勝谷は強い力で幸希の腕を掴んで歩き出した。
「お、おい!離せよ!」
抵抗する幸希を引っ張って、勝谷は丁度コンビニの駐車場を出ようとするタクシーの窓を叩いた。
「痛いって!」
パッとタクシーのドアが開き、幸希は勝谷に押し込まれるように車内に乗せられた。
「どこまで?」
勝谷は少し目を落として、「新町通りまで。」といった。
「はいよ。」
カチカチという指示器の音と共にタクシーは動き出した。
「しかし丁度良かったよ。空で帰ろうかと思ってたからね。儲けもんだよ。ありがとさん。」
「いえ、僕らもラッキーでした。」
「君たち学生さん?」
「えぇ。大学生です。」
「ほぉ〜。最近の子はみんななんだか芸能人みたいにスタイルいいから羨ましいよ。」
「そんなことないですよ。あっ、そこの角を左に曲がって下さい。」
2人の会話が盛り上がったため、幸希が勝谷に話しかける隙もなかった。
幸希は諦めてシートに背を預け、愛想よく喋る勝谷を見た。
淡々と喋る勝谷の横顔はリラックスしてるように見えるが、幸希の手を握る勝谷の手は強く熱かった。
「あっ、ここです。」
「はいよ。」
結局、勝谷とタクシーの運転手の会話が途切れぬまま、目的地に着いたようで、
(…アパート?)
「じゃあ、これで。あっ、お釣りはいいです。」
「ちょっ…。」
勝谷はお札を置くと、幸希の手を引いてタクシーを降りた。
バタン
タクシーはブルンという音を立てて去って行った。
(雨…上がってる)
周りを見渡すとそこは住宅地のようでポツポツと灯りが点いた家やアパートが静かに建っていた。
「あっ…ちょっ…」
強い力で引かれるがまま、幸希は目の前にあるアパートに連れて行かれた。
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