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お恥ずかしい話ですが
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「へぇ。綺麗なマンションに住んでるんだね」
車を降りるなりそういった弘にフードを深くかぶるように言って、自室へ向かった。もしこんなとこで生徒を部屋につれこんでるってバレてみろ、んなめんどくせぇことはねぇ。
なによりまたこの腕の中から弘を失うことが、怖い。
「わー、暗証番号なんかあるんだー。」
「前世のお前の誕生日だよ。ほら、合鍵も持っとけ。番号入れて鍵まわしたら入れるから」
「…あー、うん、ありがと」
礼をいって顔を赤くし俯いてしまった弘を不思議におもって、「熱でもあんのか」と顔を覗き込むと「キミが恥ずかしいことするからだろ」と口元を隠しながら言われた。こいつの照れるポイントがいまいちよくわからない。
「弘、腹減ってる?」
「お酒のみたーい」
「コラ、未成年」
「なんだかまだキミより俺が年下っていうのが信じられないんだけど」
「俺だって信じらんねぇよ。あーなに、ビールでいい?ビールしかねぇわ」
「きゃー、悪い先生だー」
そんなこといいながらビールの缶を受け取る弘は、ぷしゅ、とプルタブを開けてごくごくと飲みはじめる。おっさんだよ、全然こいつおっさんだよ…。
「年下っつーか、お前は弘だし」
「…そうだねぇ、でもさ、神様ってほんと意地悪。キミが先生だなんてさ」
ビールの缶を眺めながら弘が言った言葉に、ズキっとくる。そうだ、俺たちは先生と生徒、
だからこんなに近くにいても、弘に手をだせないでいる。
「ね、だからでしょ。キミがキス以上をしようとしないのは」
そしてその気持ちはバレているらしい。なんつー恥ずかしいはなしだ。弘は前世からそうだった、いつだって俺の気持ちを分かっていて、いつだって微笑んで笑顔のうしろに自分の気持ちを隠す。
成長できてないのは俺だけじゃねぇな。仕方ねぇか、俺は宮園祐介として生まれたけど、中身は大寺祐介のままだし。弘だって緒方弘として生まれたけど、中身は青木弘のままなんだ。俺たちには時間が足りていない。お互いを思ってお互いを待った時間はとてつもなく長くても、愛し合った時間は一年にも満たない。
お前がそばにいる、二度目の夏。
一度目はお前は幽霊で、触れもしなかった。お前が消えた後の俺は、お前の墓地に毎日手を合わせた。やっぱり身寄りのないお前は共同墓地に入れられてたけど、それでも弘に届くように、毎日毎日手を合わせた。
それから俺はお前より歳を重ねて、お前より10年も長く生きた。
お前ともういちど会えたときに渡せるように、ピアスだけはずっとつけてた。
思い出すだけでいやになる、お前が居なかったあの10年、思い出すだけでいやになる、お前と出会えなかったこの26年。
「それだけじゃねぇよ」
俺は弘から缶ビールを奪い、ぐびぐびの飲んだ。
こんなにも待ったんだ。お前ともういちど出会えることを信じて、こんなにも。
「多分、緊張して勃たない」
ごめん弘、これが一番の理由です。
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