アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
何の為に
-
樹に新を任せてから
俺は樹が片付ける筈だった資料を
今、黙々としているんだが
「あー、だりぃ」
いい加減新の事が気になるのに
手につくわけがない。
外を見ると雨が降り始めていた
「明日片付ければいいか・・・」
もう下校時間も迫っていたから
そろそろ帰ろうと思い、俺は生徒会室を出た
教室に寄り鞄を取ると
保健室に繋がる廊下に目をやった
「どうなったかな」
まぁ、あいつらの事だ
どうせ上手くいっただろ。
付き合ってんだし
新も好きな奴がそばに居ると
安心出来るだろう。
そんな事を思って下駄箱に向かった
「?」
すると入り口に傘を持ったまま
校門を眺め立ちすくむ大崎・・・?がいた
「大崎?」
「せ、先輩っ!!」
振り向いて俺を見るなり、
大崎は顔を真っ赤にした
相変わらず前髪が長いから
顔はよく見えないけど
「帰らないの?」
「か、帰ろうとしたん・・・
ですけど・・・」
チラチラと校門を気にする大崎が
不思議に思えた。
何を気にしてるんだ?
「俺に何か用?」
そう言うと、少し顔を上げて
また下を向いてしまった
「さ、さっき・・・
渋谷君を見て・・・その、
先輩とまた何かあったのかなって」
「え?」
新が?
あいつは今樹と居るんじゃねえのか?
「新に?いつ?どこで?」
つい掴みかかる様に大崎に質問した
「あっ、えっと・・・
さっき、校門のとこで・・・
傘もささないでその・・・泣いてた・・・ので」
泣いてた?新が?
どういうことだよ
「あのっ!先輩っ!」
引き止める大崎を置いて
俺は樹の教室に向かった
樹と何かあったのか?
なんであいつが泣くんだよ
何があったんだよ
「樹!!」
息を切らして教室に入ると
俺を見て少し驚いた顔をする樹がいた
「成海・・・」
「お前、新と何かあったのか?」
そう聞くと、樹の目が変わった
「・・・別に何も」
「何もないわけないだろ!
樹!何があった!?」
樹の胸倉を掴んでそう叫ぶ
こいつの目がすわる時は
いつだってこいつが嘘を付く時だ
「離してくれる?成海」
「だったら話せよ
なんであいつと一緒に居ねえんだよ」
俺が睨みを効かせそう言うと
しばらく沈黙が続いた
やがて樹は はーっと息を漏らして
口を開いた
「別れを告げてきたんだよ」
「は?」
「いや、元々僕と彼は付き合ってなかったんだよ成海。」
そう言うと胸倉を掴んでいた
俺の手を樹が掴み
冷たい目で俺を眺める
「成海と新を離す為にした行いだ。
もちろん、新も同意の上だったよ。
けど彼はそうじゃなかったようだ。
僕に特別な感情を抱いてしまったらしいから
その気持ちは間違いだと教えてあげたんだよ」
何言ってるんだよ
俺と新を離す為だと・・・
「成海。お前もいい加減目を覚ませ。
たかが1人の男に魅了されて
今まで積み上げてきたものを
棒に振るうつもり?
現に生徒会の仕事の進みが最近良くないよ。
新が影響してるんじゃないの?」
なんだよそれ
「そんな事で・・・あいつを傷付けたのか」
「そんな事?
僕は成海の事を思ってしたんだよ」
「樹!!」
教室に俺の声が響き
樹は言葉を止めた
「そんな事誰も頼んでねえ」
「っ・・・」
「そういう事なら、
もう遠慮なんてしない。」
ずっと、樹と新は思い合っていると思っていた。
樹が誰かに触れるなんて
今まで無かったからだ
あいつもそれが嬉しそうだったし
俺には見せない顔で笑うから
新の為に俺は身を引こうとした
「成海!まさか彼の所に行くつもり?」
俺も大概新にひでぇ事してきたし
傷付けて泣かせちまったけど
「樹」
あいつが別の誰かを思って
傷付けられて泣くのは
「あいつ、返してもらうから」
許せねえんだよ
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
57 / 617