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その時俺は
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冷たい地面の温度がヒヤリと
俺の意識を取り戻す
薄れていく意識の中で
眼鏡が氷崎の腕を掴んでいて
その後すぐに氷崎の悲鳴が聞こえる
「・・・め・・がね」
霞む視界の中で眼鏡の背中に
必死に手を伸ばした
「こんな腕の一本や二本要らねえだろ」
駄目だ・・・
それ以上は駄目だ
やめろ・・・
「ひっ・・・」
痛む体を引きずって眼鏡の元に近付いた
「やめろっ・・・眼鏡・・・」
泣き叫ぶ氷崎の声が聞こえる
眼鏡は容赦なく氷崎を痛め続ける
「もう・・・やめっ・・・眼鏡ッ」
すぐそこに居るのに
もうすぐで手が届くのに
声が届かない
「ひっ・・・やめっあああ!」
これじゃ、あの時の俺と同じになる
怒りに身を任せて暴走して
駄目だ・・・俺と同じになる
「やめろっ!眼鏡っ!」
届かない
どれだけ叫んでも手を伸ばしても
「やめっ・・・・」
どうすればいい
「・・・な」
どうしたら声が届く?
「成海!!!」
「!?」
その時気が付けば、俺は眼鏡の名を呼んでいた
最後の力を振り絞って大きく叫んだ
「新・・・・」
眼鏡がやっと振り向いた
氷崎を離して俺の元へと近付く
「もう・・・いいから・・・」
「新」
しゃがんで眼鏡が俺の手を握る
眼鏡の体温と、俺を呼ぶ声を肌で感じると
自然と涙が零れた
「っ・・・もう・・・やめっ・・・うっ」
「新」
何度も俺を呼ぶ声が
あまりにも優しくて・・・
触れるこいつの手が温かい
張り詰めていた糸が解けるように
俺はただただ、涙を零した
「・・・帰ろう」
やがて眼鏡は俺を抱き上げる
頭が朦朧として
俺はそこから意識を手放した
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