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朱色の世界
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「何食う?」
「ど、ドリンクバーで」
あのまま、話があると言われ
半ば無理やり、僕は近くのファミレスに
連れて来られた。
僕は一度目のカツアゲの時
こいつに助けられて、礼も言わずに
しかも手を振り払って
触んなっ!!とか言って
逃げちゃったし・・・
やっぱその事かな?・・・
このあと僕殴られるのかな
「ドリンクバー?
何か食わなくていいのか?」
いいよ。もうなんか色々と
お腹いっぱいだよ。
とりあえず早くその話とやらをして
僕を解放してよ。
「・・・・」
「・・・・・」
なんでそんな目で僕を見るんだよ
もうこれだから不良って嫌いだ
睨み合いで会話なんか成立するわけないだろ
「忍さ。」
「ふぉいっ」
「・・・・」
「・・・・」
くっそっ!!
急に名前呼ばれるから
変な返事しちゃったじゃないか!!
ん?・・・あれ・・・
「なんで、僕の名前・・・」
名乗ってないよな?
なんで知ってるんだ?・・・
「ふっ、なんだよフォイって(笑)」
いや、そこカタカナにしないで。
「ほら、これ」
そう言いながら、こいつは
ポケットからカードらしき物を取り出して
僕の前に見せてきた
「え!僕の学生証!!」
「お前落としてったから。
すぐ届けようとしたけどお前逃げ足はぇし、
俺も急用(半額セール)あったから
追い掛けれなくてさ。」
うぉふっ
僕はこいつに二つも借りを作ってしまったのか!
いや、さっきの事を合わせて三つか!
「ど・・・どうも」
「ん」
学生証を受け取ると、こいつは
にこっと笑って水を飲んだ
「・・・・」
「・・・あの・・」
「ん?なに?」
「で、・・・僕は何をすれば」
そうだよ。きっとこの話だ
お礼に僕に何かさせる気だな
金か?それともパシリか?
はたまたこいつのサンドバックか・・・
「?・・・別に何もしねえでいいけど」
「そうですよね。分かりました。
お金ならなんとか・・・」
え?
何もしなくていい?
「え、じゃあ、この学生証を
僕に渡す為だけにここに?」
「ん?そうだけど」
「・・・・な」
なら外で渡せよ!!!!
わざわざファミレスに居座る必要ねぇだろ!
「忍さ」
僕の名前を気安く呼ぶな
「な、何でしょう」
もう早く帰らせてお願い。
「なんで前髪長えの?」
「・・・・」
そうだよね。必ず聞かれる質問
もう慣れたよ
「ひ、人の目を見て話せないから・・・
・・・隠してる」
いや、少し嘘だ。
確かに人の目を見て話すのは苦手だ
けど他に理由がある。
目は僕のコンプレックスなんだ。
男のくせに異様にデカくて
小学校の頃そのせいで不審者に
女の子と間違われて連れ去られそうになって
「ふーん。」
それから、僕は目を隠してる
背中でも丸めて歩けば
立派なキモ男の出来上がりだ。
それから女の子に間違われる事も無くなったし
そう悶々と昔の事を思い出してる時だ
ぬっと、僕の方へ手が伸びて
「っ!!!」
「ほら、上げてる方が・・・」
「なっ・・・」
こいつの手で、前髪が上げられて
目の前がパッと明るくなった
「お前「やめろよっ!!」」
僕は反射的に手を振り払った
「わりぃ。でも、お前目デカイな!」
「っ・・・」
一番言われたくない事を
「どうせ・・・男のくせにキモいとか
思ってるんだろ」
最悪だ・・・
なんでこんな奴に
「なんで?めちゃくちゃ綺麗じゃん」
・・・は?
「き、綺麗とか・・・」
満面の笑みでそう言うから
つい真に受けてしまった
嘘の無いようなこいつの言い方に
何故か、嫌な気はしなかった
肩を縮ませて僕は気持ちを
落ち着かせようと水を一口飲んだ
またこいつは僕の事をじっと見てる
飲みにくいなぁもう。
その時、こいつが口を開いた
「いっつもカツアゲされてんの?」
「え?」
カツアゲ?いや、さっきので
二度目だけど・・・
「べ、別に・・・毎度の事じゃ」
「・・・・」
何?カツアゲが何?
「あんな奴ら一発殴れば黙るだろ」
「そんな事・・・出来るわけないだろ」
あんたと違って僕は
ビビリの根暗なんだよ。
心の声で必死に対応するのが精一杯だよ
「んー、そうだな。
お前弱っちそうだし。」
反論はしない。その通り。
ザッツライ!!
「じゃあさ。」
目線を下にやって早く帰りたいと
何度も思っている時だった
「一緒に帰ってやるよ」
「・・・はい?」
いや、なんでそうなる
僕は一人で帰りたいんだよ
「お前見かける度に何かと
変な奴らに捕まってるし」
いや、その中にあんたも入ってるよ
現に今あんたに僕は捕まってるよ
「忍の通う学校に俺の親友がいるんだ!
俺もお前の学校に行ってみてぇし」
知らないよ。ならそのお友達と
一緒に帰ってよ
「い、いや・・・それは」
「な?」
ああ・・・なんて断れば
けど、これって断ったら
殴られるのか?
どうすればいいんだよもう。
「俺、菅原秋人。」
「す・・・菅原さん」
お母さん助けて。もう忍ヤダよ
「秋人で良いよ!
なんだよ苗字にさん付けって。
俺ら同い年だろ?」
お、同い年なのかよ・・・・
「じゃあ・・・秋人君」
あーもう。なんでもいいよ
そのうち適当に断ればいいか。
「んじゃ、さっそく明日
忍の学校に迎えに行くな!」
そうやってまた、こいつはにかっと笑った
「っ・・・・・」
その時、何故かこいつから
フワリと優しい香りがして
「・・・よ、よろしく」
上城先輩の
甘くてふわふわした香りとは真逆の
「・・・・」
なんだろう・・・
言葉では表せない
何度でも感じたくなるような
凄く、不思議な香り
「忍?」
「・・・な、なんでもないっ」
この時の僕はまだ知らなかった
白黒の世界の中で感じる色が
先輩だけだった僕に
熱くて 眩しくて
暖かい 朱色の世界が
これから広がって行くことを
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