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言葉の鎖
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僕の呟いた言葉に、
新は詰まるような声で返事をした
予想していた通りの返事に
また胸がチクリと痛んだ
「は、離して・・・下さい」
また弱い力で、僕の腕を押してくる
「新」
「ちょっ、会長っ」
離れようとするこの小さな体を
また引き寄せては、先程よりも強く抱き締めた
「好きだよ」
「・・・っ」
耳元でそう言葉を吐いて
意識を成海から僕へと向けさせる
呟いたその言葉に、新は耳まで真っ赤にして
払いきれない僕の腕をきゅっと掴んでくる
「か、会長・・・俺」
「好きだよ。新」
「っ・・・」
僕はこんなに嫌な奴だったかな?
多分、新が僕に言おうとしている事は分かる
僕から離れたい理由も分かる
だけど、この手を離したくない
成海の元へ 行かせたくない
「新・・・」
「樹」
その時、そう成海の声が聞こえた
「・・・成海」
「なっ」
顔を上げると、少し離れた場所に
こちらをじっと見つめる成海がいた
「眼鏡っ」
成海の姿を見つけると、
新は先程とは違い、強く僕の体を突き放して
するりと僕から離れてしまう
「・・・・っ」
そして、下を向いては黙ってしまった
「樹、行くぞ。理事長が呼んでる」
そんな新に見向きもしないで
成海はそう言うと背中を向けて
そのまま行ってしまった
「ごめん新。呼ばれてるから行くね」
「は、はい」
成海に何も声を掛けられなかった新は
少し傷付いた顔をしていた
「新、返事はまだいいから」
そんな新に、また蓋をするように
僕は耳元でそう呟く
「・・・・っ」
そして、成海の後を追ってその場を去った。
ごめんね新。
本当はすぐにでも成海を追いかけたかったよね。
そんな君を、分かっているのに
また言葉で君を縛ってしまって
「・・・僕は卑怯だね」
どうしようもないんだ。
そうでもしないと、すぐにでも
君は僕の手の届かない場所に行ってしまう。
「成海」
「・・・・何?」
ようやく成海に追いついて、
振り向きもしない背中に言葉を投げた
「なんで新に声を掛けなかったの?」
「別に。あいつも嫌がってなかったし」
「随分と余裕だね。」
「・・・・・」
黙った成海の背中から僕の言葉に
苛立ちを放っているのが分かる
“ 余裕 ”
きっと成海には余裕なんてない。
それは、新がまだ僕の事を好きだと思っているから。
「樹」
でも、それは違うよ
「なに?」
成海は振り向いて、真っ直ぐ僕を見つめてきた
その顔つきに、背中にゾクっと何かが走る
「お前には渡さねえから」
僕の目を真っ直ぐ見つめて
成海はそう言った
その顔から、成海は新の事を本気で好きなんだと伝わってくる
「・・・ああ」
そんな成海を見て、僕は笑みを零し
地面に目をやった
きっと、余裕が無いのは 僕の方だよ
「僕も」
だから、どんな手を使ってでも
「新は渡さないよ」
お前には渡したくないんだよ
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