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初めて味わう喧嘩の恐怖
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秋人君に言われた通りに
殴り合いが始まりそうになった瞬間
僕はぎゅっと目を閉じた
人と人との殴り合いなんて
見れたもんじゃない・・・
やがて、ガタガタと物音が鳴り響き
喧嘩が始まると、また体が震え出した
「この程度っすか?」
「っ、くそがっ」
声だけが聞こえる中、
苦しむ声を出しているのは鬼達で
秋人君は余裕そうな感じだった
「・・・・っ」
それでも殴り合う音は続いて
倉庫の中で暴れまわる鬼達が
次々に壁に体当たりをしているような音が聞こえる
「数居る割りには弱いっすね」
「ってめぇええええ!!」
また、大きくガタンっという音と
何かが倒れた音が聞こえる
「・・・・っ・・・ぅッ」
・・・音と声だけなのに
頭に流れるイメージは本当にひどいもので
「ヒッ、クッ・・・うっ・・・」
僕が殴られている訳でもないのに
体中がジンジンして、涙が溢れてくる
「っケホッ・・・はっ、
今のはいいパンチでしたよ」
「ほざけ、手加減してやったんだよ」
殴られているのに、秋人君の声は
どこか楽しそうで・・・
「んじゃ、今度は俺の番っすね」
ゆっくりと、少しだけ目を開けると
口から血を流してにやりと笑う
秋人君の姿が目に映った
「あ・・・秋・・・人君」
その顔は、見たこともない顔
いつもはヘラヘラして気の抜けた顔なのに
今の秋人君は・・・まるで別人
「秋人君・・・っ!!」
その時、秋人君が蹴り飛ばした不良の一人が
僕の足元に倒れて来た
「ぐっ・・・ぁっ」
お腹を強く蹴られたのか、
うずくまったまま、苦しそうに声を零している
「あとはあんただけっすよ」
「っ、くそガキがぁ!
調子乗ってんじゃねえぞ!」
残るは大柄の男、睨み合った後
また二人は殴り合いを始めた
目が閉じれなくなって、
ただただ、その光景を見つめていた
「っがはっ・・・」
大柄の男は、秋人君にパンチを食らわされて
ガクっと膝を地面に落とした
「まだやります?
俺、もう飽きたんすけど」
その男に近付いては、
秋人君は見下ろすようにしてそう言った
「っ・・・秋人君・・・」
これが、喧嘩というもの
「・・・っ・・・てめぇ」
「手応え無さ過ぎなんだよ」
「っ、んのやろぉおお!!」
こんなの、人間が出来ることなのか
同じ人間で、こうも違うのか
「だから、もう飽きたって」
そう呟いて、秋人君はまたその男に蹴りを入れた
無残にも倉庫の外に蹴り出された男は
地面に這いつくばって
ゲホゲホと咳き込んでいる
「・・・と、まぁこんくらいでいいか」
本当に、五分も経ってない間に
この人は簡単に勝ってしまった
「忍、終わったぞ」
肩の力を抜いて、僕の方を向いては
いつものように秋人君はにこりと笑った
「忍?」
「っ!!」
僕の方に伸びた手に、
恐怖を感じて、体がビクっとした
「あっ・・・・ご、ごめ、・・・」
「忍・・・」
どんな形であれ、僕を助けてくれたのに
伸ばしてくれた手を拒むみたいな事を・・・
「うっ・・・っ・・・ごめっ・・・」
でも、怖かった・・・
始めて殴られて、始めて喧嘩を目の当たりにして
「忍・・・大丈夫か?」
その時、秋人君は僕の頭を撫でてきた
心配そうな声で、僕の顔を覗き込んでくる
「っ・・・う、ん・・・グズッ・・・・ぅッ・・・」
「な、泣くなよ!おいっ!」
喧嘩をしてる秋人君は怖かったけど
それでも、いつもの秋人君に戻って
優しく頭を撫でて来られたら
「っふぇ・・・ヒックッ・・・
怖、かったッ・・ゔぅ・・・グズッ・・・」
この人が居てくれて良かったって
安心して涙が止まらなくなる
「ん、怖かったよな。ごめん」
「うっ、・・・っ」
泣きじゃくる僕の頭をずっと撫でてくれて、
その優しい手の温もりに
少しずつ、落ち着きを取り戻していった
「くぉらぁあ!!そこで何してる!」
「っ、くそっ・・・」
やがて、遠くから先生の声が聞こえて
うずくまっていた不良共は
ボロボロになった体を引きずりながら逃げて行った
その後を数人の先生が追い掛けて行って
辺りはシンと、静かになった
「・・・もう大丈夫か?」
「う、うん・・・」
落ち着いたら、
なんだかこの状況が恥ずかしくなってきた
だって、僕今女装してるし・・・
「・・・・・」
・・・・ん?・・・・・・女装?
「え、演劇・・・」
そうだ、演劇!!!
「忍?」
「僕っ!行かなきゃっ」
急に立ち上がろうとしたら、
足に痛みが走って、倒れそうになったのを
秋人君が支えてくれた
「忍、おい足腫れてんぞ」
「えっ、そんなっ・・・」
左足首に目をやると、
青くぼっこりと腫れている
「か、階段で落ちた時・・・」
痛みより恐怖が勝っていたから
気付かなかった
最悪だ・・・こんなんじゃ
「秋人君っ、僕を連れてって!」
「は?保健室か?」
「違うよ!先輩達のとこ!」
どうしようっこんな足じゃ・・・
「おい、忍・・・」
「うっ、い、かなくちゃ・・・」
先輩達に迷惑を・・・
「忍!待てって!」
無理やり歩こうとした僕を
秋人君は押さえつけてきた
「待てって!とりあえず新に連絡すっから」
「・・・・・・・あ、らた?」
新って、渋谷君の事?
なんで、秋人君が渋谷君を?
「新に今の状況説明するから、
ちょっと待て。無理に動くなよ」
「っ・・・・」
がっしりと腕を抑えられていたら
動くにも動けないよ・・・
僕の腕を抑えたまま、秋人君は携帯を取り出して
何やら電話を掛け始めた
「・・・・あ、もしもし新?
おう。・・・あぁ、それが忍が」
というより、
・・・・なんで、渋谷君を知ってるんだ?
「あ、会長さん?初めまして新のダチっす。
唐突で悪りぃけど、忍はこのまま連れ帰ります」
って!何勝手な事言ってんの!?
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