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黒い王子
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本当なら、ここからのシーンは
魔女と化した眼鏡に、毒入りのリンゴを食べらされ
白雪姫の俺は眠る様にして死ぬ
はずだった・・・・
『私は、貴方を王妃の魔の手から救いに来た
もう一人の王子です』
『・・・・・・』
こいつは有るはずもない台詞を言っては
マントを脱ぐなり、跪いて俺の手にキスをしてきた
いや、そんな事よりも、何故眼鏡は
黒い王子の衣装を着ているんだ
『・・・え』
突然の出来事に、頭が真っ白になって
さっきまで用意していた
本当の台詞が、一気に吹っ飛んでいってしまった
客席からも、ザワザワと声が聞こえる
『・・・(おい、合わせろよ)』
跪いたまま、眼鏡は目線を俺に向けて
小声でそう言ってきたけど
『(お、お前っ!なんだよこれは!)』
合わせろってなんだよ!
ちゃんと台本通りに進めろよっ
『あっ・・・』
そ、そうだ!カンペ!
絶対眼鏡が勝手に暴走してるだけだ!
きっと、部長さんが助けて・・・
『(ぶ、部長さん助け・・・)』
そう思い、咄嗟にカンペの方へ
“助けてくれ”と目をやった
「(グッジョブっ!副会長っ❤︎)」
すぐに、ビシッと親指を立てて、
目を❤︎にする部長さんが目に入った。
『・・・』
あんたの仕業か。(怒)
キッと目に力を込めて、部長さんとカンペ役の奴等を睨む
なんで他の奴等も嬉しそうに
にやにやしてんだよ!
そうだ!会長っ!会長なら!助けてくれ・・・・
部長さんの背後へと視線を移して
今度は会長に助けを求めた
『(か、会長ぉっ!)』
「・・・・・(殺気)」←樹
『・・・・・』
ブワッと、黒々しいオーラを放つ人物
見なかった事にしようと思い
ゆっくりと視線を眼鏡へと戻した
『・・・・っ』
ここまでの流れは、ほんの数秒の事だ。
『(おい、何か台詞言え)』
俺が黙ったせいで、進みが止まってしまったから
客席のざわつきはさっきよりも増していた
俺のせいじゃねえけどな!
けどこのままじゃ、最悪な事態に・・・
いやもうなってるけどっ!
『な、・・・』
もう、やるしかない
俺が!この馬鹿げた芝居を
元のあるべき姿に戻すしかない!!
『何を言うんです?あの方はとってもお優しいのに、そんな・・・』
うふふっ、と作り笑いをしては
頬に手を添えて引きつる顔を
客に見られない様に隠し、眼鏡から離れそうとした
『あ、そうだわ!お婆さんを見かけませんでした?
見るからに怪しそうで、手にリンゴを沢山入れたカゴを持った
まるで魔女のような・・・』
そして、なんとか本来の白雪姫の物語へ戻るように
ネタバレ覚悟でペラペラと即席の台詞を言ってやった
ここまで言ったら、もう俺に合わせるしかねえだろ
なあ、くそ眼鏡!
お前と部長さんの思い道理にはさせねぇっ
『いけません・・・』
『なっ、ちょっ!』
いきなり、離れようとした腕を引かれ、
そのまま眼鏡の腕の中へと引きずり込まれた
『(ちょっ!おい!)』
『老婆の姿に身を変え、貴方を毒入りリンゴで殺そうと企んでいたのはあの王妃です。』
はっ!?
『大丈夫です。私が始末しておきました』
ちょっと待てぃ!!!
お前!なんて事を言ってるんだ!
それを言ったらもう修正効かねえじゃねえかよ!
『は、離して下さいっ』
くそっ!どうすんだよ!
毒入りリンゴで死ななかったら
どう終わらせるつもりだよ!
『っ、いけません!離してっ』
ギリギリと、なんとか白雪姫の役を保ったまま
眼鏡から離れようと腕に力を入れた
『白雪姫・・・』
くそっ!力強えぇ!離せよ馬鹿眼鏡が!
もうこんなの白雪姫でも何でもねえよ!!
『好きです』
『は・・・?』
突然、眼鏡はそんな事を口にした
『初めて見た時から、貴方の事を愛しく思っていました。
どうか、この手を拒まないで下さい』
『・・・・・・』
ちょ、ちょっと待て・・・
何を言い出すんだお前は
これも、部長さんが仕掛けた台詞か?
そう思い、またチラリとカンペの方を見た
「〜ッ!(鼻血)❤︎」
ナイスですっ❤︎と、言っているかのように、
部長さんは鼻血を出しては悶えていた。
そして、その周りの演劇部の奴等も
『・・・・(怒)』
ほんとに、馬鹿ばっかなのか?
馬鹿の集団と書いて演劇部なのか?
『は、離して!』
とうとう我慢出来なくなった俺は
眼鏡から強引に離れて、少し距離を取った
『私ではダメですか?』
当たり前だろ!!
どこにそんな得体の知れない王子と
ゴールインする白雪姫が居るんだよ!
白雪姫にはちゃんと本当の王子が居るんだぞ!
『だ、だめです・・・』
『なぜ?』
くぉぉぉおおお!!
これ以上ややこしくすんなよっ!
素直にはい、分かりましたさよならで終わらせてくれよ!
『わ、わたしにはきっと、
これから素敵な王子様との出会いがあるから・・・』
そう!ちゃんとした王子!
俺はこの後出てくる会長王子と結ばれるんだよ!!
『・・・・素敵な王子?』
そう呟いた眼鏡は、視線を俺の後ろのカンペへと移して
すぐにまた俺を見ては、にやりと笑った
『なるほど・・・
貴方には既に運命の人が居るのですね』
そうだよ。黒い王子じゃなく
真っ白な輝かしい王子が居るんだよ
『ならば、仕方ありません』
『ふぉっ!?』
急にまた、眼鏡に腕を引かれたかと思えば、
眼鏡は俺の背中に手を回して
そのまま床に押し倒してきた
『(お、お前!なにをっ)』
『白雪姫、愛しています』
俺の顔に近付いては、眼鏡はまた甘い台詞を放つ
『っ・・・だ、だめ』
近い!顔がごっつ近い!
つか!なんで客も、おぉ〜って声揃えて言ってんだよ!!
おかしいだろこの展開っ!!
『(部長さん!いい加減にして下さいよっ)』
倒れたまま、また部長さんの方へ目をやると、カンペを指差してはにやにやしていた
そして、何故眼鏡が押し倒してきたか分かった気がした
“ 副会長❤︎そろそろ白雪姫を殺して下さい❤︎ ”
『・・・・』
いやそこ、❤︎ 使うとこじゃねえ
あんたが一番怖えよ部長さん・・・
つか、この展開でどう俺を殺すんだよ
『どうしても、私ではだめですか?』
やけにエロい眼鏡の格好と表情、
その呟いてくる甘ったるい言葉に
心臓の音がバクバクと跳ね上がってくる
『・・・っ(し、死ぬっ)』
もう、別の意味で殺される
大勢の前で、こんなこと・・・
いくら劇だからって、恥ずかし過ぎる
『(新、可愛い・・・)』
そんな時、ボソっと眼鏡がそう言った
『ふぇ・・・』
涙が零れそうになった時、
眼鏡は俺の顎をクイっと掴んで顔をすれすれまで近づけて来た
『貴方が誰かのものになってしまうくらいなら、
私の手で貴方を殺して、私だけのものにしてしまおう』
『なっ・・・んッ!』
そして、眼鏡が台詞を言い終えると共に、
唇に、柔らかい感触がした・・・
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