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白い王子
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眼鏡にキスをされて、あいつは俺の耳元で
“このまま死んだふりしてろ”なんて言い残し
そのまま舞台裏へと帰って行きやがった
キスをされた瞬間、客席がわっと沸いたけど
そんなの耳に入ってこなかった
『・・・・っ』
まさか、キスで殺してくるとは
あのくそ眼鏡が、まさかこんな大勢の前で
キ、キスしてくるなんて!
いや、ま、まぁ劇を繋げる為だ
仕方ねえ事だうん。
くそっ、心臓がうるせえっ!!
『・・・・(泣)』
ポツンと壇上に取り残されて、
一人になった途端に、
さっきの事を思い出しては手が震えてきた
恥ずかし過ぎる・・・
もうなんでもいいから早く劇終わってくれ
これ以上羞恥を晒すのは嫌だ
『(新・・・・)』
そう思っていた時、上から会長の声が聞こえた
『(か、会長?・・・)』
あれ、普通ここは小人達が白雪姫を見つけて
ぎゃーぎゃー喚く場面じゃなかったか?
そんでそこに、本物の王子が・・・
って、本物もなにも、
元から王子は一人なんだけどよ
まぁ、もうこの際小人役が全面カットされたのなんて
すぐに検討がついた
小人B〜G。可哀想に・・・
『・・・・』
ん? 会長?
なんで台詞言わねえんだ?
『(会長・・・)』
不思議に思い、少しだけ目を開いてみた
『(新、凄く綺麗だよ)』
っと!えっ!?顔近っ!!
思いのほか会長の顔が近くにあったから
びっくりしてまた目を閉じた
その顔が、あまりにも綺麗だったから
また心臓のドキドキが強さを増した
俺を見下ろしていた会長は
本当に、女の子が夢見る王子様みたいだった
『やっと見つけた。僕だけのお姫様』
その時、胸のドキドキに混じって
会長の言葉が聞こえてきた
やっぱり、台本には無い台詞
『目を覚まして。君を迎えに来たんだよ』
その言葉を言った時、
会長は俺の頭に手を回してきて、体を少しだけ起こされた
『白雪姫・・・目を覚まして』
いや、覚ませねえよっ
普通白雪姫は王子様のキスで目を覚ますんだぞ!
それなのに、別の王子のキスで
眠ってんだぞっ
つか死んでんだぞ!
どうやって目ぇ覚ましたらいいんだよ
全然分かんねえよ・・・どうすんだよ
『・・・・・っ』
と、とりあえず、心臓が・・・
眼鏡といい会長といい、
なんて色気を纏わせてんだよっ
『悪い王子に、何かされてしまったんだね?』
ふぁ??
何かじゃなくて!キスされたんですよ!!
つか悪い王子って・・・
眼鏡、お前やっぱ悪役だよ
『君はここに居るのに、
まるで心が抜けてしまっているようだ』
ええ、そうですよ。
だって俺、死んでるもん
・・・・なんだよ もんって
もう混乱し過ぎておかしくなってきた
『なら僕の心を君に捧げよう』
『(えっ・・・?)』
会長の声が、耳元で聞こえた
それから会長に、頭を引き起こされて・・・
『それで君が目覚めてくれるなら』
あ、あぁ、キスか。
キスするふりして生き返らせて
元の白雪姫でハッピーエンド☆
って事だな会長!
流石だぜ。上手く劇を元の終わりに
持ってきてくれ・・・
『っ・・・!?』
て!?
『ちょっ、かいちょっ』
いや、フリじゃねえ!!!
会長っ本当にキスをっ
『(しっ・・・まだ演技は終わってないよ)』
びっくりして体を引き起こすと
会長は俺の口に指を当ててきた
『(で、でもこんなっフリのはずじゃ)』
まさか、会長までもがこんな事をっ
『(なんで?僕は本物の王子様だよ?)』
いやそういうことじゃなくてっ!
『(新、少し黙って)』
『・・・っ!?』
また会長に手で口を塞がれ
そのまま俺をお姫様抱っこで抱き上げては
会長は客席の方を向いてにこりと笑った
『目を覚ましてくれて良かった。
白雪姫、二度と君を離さない』
か、会長っ!!
この格好恥ずかしいって!!
『(新、台詞続けて)』
会長にまたそう言われ、
早くこの状況をどうにかしたかった俺は
震える声で台詞を続けた
『お、王子様・・・
貴方はわたしの・・・う、運命の人・・・』
この台詞を言って、次の台詞を言えば劇は終わり
『君は僕の運命の人・・・
例え、また誰かが君の命を狙おうと
僕がその全てから君を守ってあげる』
ふぉっ!なんという台詞っ
女子が聞いたら惚れるよ会長・・・
『白雪姫、僕のものになってくれるよね?』
よしっ!この台詞で最後だ
『も、もちろんです・・・王子様』
終わった!!やっと終わったぞ!
あとは幕が下りて・・・
『ならば、愛していると言って下さい』
『ふぁっ?』
・・・・・・ま、幕が下りて・・・来ない
『僕の事を、誰よりも愛していると
今ここで誓って下さい』
い、いやちょっと待って会長
そんな台詞無いよな?今更だけど
それに劇はもう終わったよな??
『僕は君を愛してる。
誰よりも愛してます。白雪姫』
『ちょ、(会長っ)』
『(続けて)』
必死に目で抵抗したけど、
会長の真剣な目に、言葉を詰まらせてしまった
『っ・・・』
これは、俺が言わねえと終わらねえやつか
『あ・・・』
どうせ部長さんが満足行くまで
この芝居を続けさせるつもりなんだろ
『愛して・・・ます』
くそ・・・ならさっさと言って終わらせてやるよ
『誰よりも?』
『っ・・・・』
どうせ・・・え、演技だし
『だ、誰よりも・・・・・・愛して、ます』
絞り出すようにして言葉を放つと
顔が一気に熱くなった
演技とはいえ、愛してるなんて
初めて口にしたから
その慣れない言葉のせいで
勝手に体が火照ってくる
『っ・・・(か、会長っもう)』
抱き上げられたまま、
客席を向いてそう言ったから
恥ずかしくて、会長の服をぎゅっと掴んで目を閉じた
早く幕が下りてほしいと思ったのに
まだ幕は下りなくて
手が震える中、また少しだけ目を開いては
会長の顔を見た
『(・・・好きだよ。新)』
『え・・・・』
『(成海には渡さない)』
俺をじっと見下ろしたまま
会長は、小さく呟いて
『んっ!?ッ・・・ふぁッ・・・かいっちょッ』
いきなり俺にキスをしてきた
『ッ・・・んッ・・・やぅッ』
し、しかも!舌まで入ってきたっ
『んんッ・・・かいちょッんっやめッ』
なにが起こったのか分からなくて
まだ幕は下りてないのに
つい素に戻っては必死に抵抗した
でも、その手もすぐに掴まれて
会長の肩へと誘導された
『ッ・・・・ふッーんんッ』
もう、客の声なんかどうでも良かった
拒んでも、キスを止めない会長に必死に抗っては
『っ!・・・んぁッ』
頭の中に、あいつの顔が浮かんだ
そして、ようやく幕が下り始め、
完全に下り切ると、
やっと会長は口を離してくれた
「っ・・・はぁッ・・・ッ」
「・・・・新」
幕の向こう側から、盛大な拍手と歓声が聞こえたけど
そんな事なんてどうでも良かった
「っ!離して下さいっ」
その瞬間に、会長を強く引き剥がして
少し距離を取った
唇に熱い感覚が残っていて
動悸が激しくなる
「新・・・・」
そして、会長が俺の方へ手を伸ばそうとした時
「やぁあああん❤︎会長ぉ❤︎
最高の締めをありがとうございました❤︎」
部長さんが、ピンクのオーラを纏わせて走ってきた
「舞園・・・」
「ふふ❤︎まさかここまでしてくれるとは
思ってなかったです❤︎」
部長さんは会長の元に駆け寄っては
またボソボソと何かを話していた
「・・・・っ」
顔が熱いし、さっきから胸がざわざわする
会長の言った言葉が、頭の中をぐるぐるして
「会長❤︎この後の挨拶お願いします❤︎」
「ああ・・・」
会長に背を向けると、その背中に会長の視線を感じた
振り向けなくて、俺はそのまま舞台裏へと戻ろうとした
その時
「・・・・・」
「・・・・・なっ・・・」
あいつと 目が合った
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