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自分を見ているようで
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文化祭が終わって、次の日は代休。
昨日新は暫く泣いたあと、
泣き疲れたのか僕の腕の中で眠ってしまった。
でも、寝ている時も
ずっと成海の名前を呼んでは
僕の服をきゅっと掴んできた。
新の寝顔は凄く可愛いくて
時々息を漏らしては顔を僕の体に擦りつけてきた
その小さな体が、愛しくて
もう明日には触れないと思うと
胸が酷く苦しくなった
僕は沢山新を傷付けてしまった
新の気持ちに気付いていたのに
新を縛り続けて、沢山泣かせてしまった
だから、もう泣かせたくない
新には笑ってほしい
「・・・・・」
でも、その前に確かめなくちゃいけない事がある
今更、こんな事になった後で
どうにもならないかもしれないけど
「・・・・ここに来るのも何年振りかな」
今日が休みで良かったと思う
きちんと、成海の気持ちを確かめれる
今朝、大崎の家に様子を見に行った後
僕はその足で成海の家に来た
小さい頃からよく成海の家に来てたけど
高校に入ってからは一度も来ていない
僕と成海は、家系も育ちもよく似ていたから
お互いの気持ちは、お互いがよく分かってる
でも、昨日成海が取った行動は僕には分からない。
仮に、僕が出来なかった事を、
お前がしたというなら・・・
「ちゃんと、本当の事を・・・」
その気持ちには、きっと裏があるはずだ
インターホンを鳴らすと
暫くして、中から足音が聞こえ
やがてガチャリと扉が開いた
「はい・・・」
「・・・・成海」
眠そうな顔で、成海が扉を開け
僕の顔を見ると、少しだけ目を見開いたが
「樹・・・」
やがて、また不機嫌そうな顔に戻った
「なんか用かよ・・・」
目が少し赤い・・・寝てないのか?
「成海、ちょっと聞きたい事がある」
「・・・・なんだよ。俺眠いんだけど」
怠そうな返事をしては
成海は大きく口を開けてあくびをした
「なら、すぐ終わらせるよ。
率直に聞くけど、昨日お前が言った事どういう意味?」
「は?」
「新の事だよ」
「・・・・・・」
僕がそう言うと、成海は少しだけ
視線を下に落とした後、
また僕を見ては口を開いた
「別に。昨日言ったまんまだけど?」
「・・・・・」
やっぱり、成海の目は
新の事を必要ないと言っているような目
「つか、そんな事聞く為にわざわざ来たのかよ。
随分暇してんだな。」
「大事な事だよ・・・成海
それに僕は暇じゃない。
こうしてここに来たのは新の為だよ」
「・・・・・」
成海の目を真っ直ぐ見ながらそう言うと
成海はまた視線を下に落とした
「あんな奴、もう要らねえよ」
「それは本音から言ってるの?
それとも強がり?余裕が無いから?」
「は?」
お前は昔からそうだった
何かを心に抱えてる時は
絶対僕の目を見て話そうとしない
「新の事、本当はまだ好きなんでしょ?」
「・・・・・」
本音から言ってるなら、
僕の目を見てちゃんと言えよ
「・・・・樹」
その時、成海が顔を上げて
僕の方へ近付いては胸倉を掴んできた
「いい加減にしろよ。
俺はあいつの事なんかもうどうでもいいんだよ。
今更欲しいとも思わない。」
「・・・新は昨日、お前が言った事に
酷く傷付いてずっと泣いてたんだよ」
「あいつが泣こうが喚こうが、勝手にすりゃいい
お前が側に居てやれば、あいつも安心するだろ」
「・・・??」
少しだけ、成海の声が変わった
「まさか、僕の為に身を引こうなんて事
考えてるんじゃないよね?」
そうだとしたら
「はっ、何を今更・・・そんな訳ねぇだろ」
成海は、そう言うと僕から手を離して
家の中へと入ろうとした
「要らねえと思ったから捨てる。それだけの事だ」
「要らない?」
「俺は他人に興味なんか無い
自分に不必要だと思ったら切り捨てる
樹、お前が一番分かってる事だろ」
「・・・・」
確かに
お前の事はよく知ってるよ
周りの事に関心がないのも
必要ないと思った物はすぐ切り捨ててしまう事も
「・・・・っ」
それは、僕も同じだった
「話は済んだ。もう帰れ」
だけど
「新は、昨日お前が去った後
何度もお前の名前を呼んでた」
僕もお前も、きっと新と出会って
変わったはずだ
「泣き疲れて、眠った後も
ずっとお前の名前を呼んでた」
今まで僕達が気付けなかった事を
感じれなかった気持ちを大切な事を
あの小さな体で、沢山教えてくれた
大きな存在を
「それでもお前は、新を捨てるの?」
「・・・・・」
僕がそう言うと、成海は少し黙って
また、ため息を零しては
僕の目を真っ直ぐと見てきた
「樹・・・・」
「・・・・・・・」
「うぜぇよ・・・」
そして、その目はまだ、あの冷たい目
「っ、成海」
ここまで言っても駄目なのか・・・
「・・・・・・だよ」
掴みかかろうとした時、
成海は何かを呟いた
「だから・・・俺じゃ駄目なんだよ」
「・・・・な」
どうして、そんな傷付いた顔・・・
「もう帰れ・・・」
そう呟いて、成海は扉を閉めてしまった
「・・・・成海・・・」
さっき言った事が、
お前の本当の気持ちだとしたら
「明日の朝、僕はもう一度新に気持ちを伝える。
その時、返事を貰うつもりだ」
閉ざされた扉の向こうにいる成海に
そう言葉を投げ掛けた
「お前が本当に新を捨てると言うなら
新は僕が貰う。僕が新を幸せにする。
もう遠慮なんてしない。」
成海、お前が僕に言った事だよ
お前が初めて僕に対して感情的になって
そう言っては、新の為にお前は動いたんだよ
「・・・・」
僕が思っている通りなら、
僕と同じ事を考えていたとしたら
お前はやっぱり最低だよ。
「・・・・同じだ」
お前は捨て切れやしない
傷付くのが怖くて、傷付けるのが怖くて
取り返しのつかなくなる前に
手に入る前に、それを遠ざけようとする
「最初の頃の、僕と同じだよ」
新と出会う前の・・・自分と同じだ
「成海」
ほんと、どこまでも僕と似た考えのお前が
「僕は心底、大嫌いだよ」
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