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根暗と不良
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家の中に入ると、以前来た時とは違った緊張感に襲われる
前は小夏ちゃん達が居たから
家の中は慌ただしくて賑やかだったのに
今日は二人が居ないからびっくりするくらい静かで
台所の蛇口からポタンっと水が落ちるそんな小さな音だけが聞こえてくる
「ちょっと散らかってっけど、許してくれよな」
「ふぉいっ!」
「??」
「〜〜ッ!!」
くそっ、き、緊張し過ぎてまた変な返事をっ
「そ、それよりお前その格好嫌なんだろ?」
「え?」
「ちょっと待ってろ」
いきなり、秋人君はそんな事を言って
何やら自分の部屋に入って行ってしまった
「ん」
そしてすぐに戻って来たかと思えば
何やら僕に着替えを持って来てくれたらしく
表に大きく黒い文字の入った白いTシャツと
スエットのズボンを渡してくれた
「もうちょっとその格好見てたかったけど、
嫌なら仕方ねえよな。」
「・・・・」
見てたいとか言うなよ
秋人君そんな趣味あんの?
「まぁとりあえず着替えて来いよ。
今湿布とか持ってくるからよ」
「・・・ど、どうも」
いや、そんな事にいちいち触れないぞ
君の性癖なんて知った事か
まぁやっとこの忌々しいチャイナドレスから解放されると思い
服を脱いで渡された服に着替えた
服のサイズは僕より遥かに大きくて
服の裾なんて下手したらワンピース並みにある
体格も僕よりがっしりしてるし
なんというか秋人君は本当に男の子って感じで
僕なんかむしろ女の子寄りなんじゃないのか・・・
「・・・なんかムカつくな」
そんな事を考えていると、前の方にプリントされている文字に目が行った
「・・・・・ん?」
シャツを掴んで暫くその文字を見ると
何故かチャイナドレスの方が良かったと思えてしまって、
服を掴む手がプルプルと震えてきた
たまらなくなった僕は、すぐに秋人君に向かって叫んだ
「あ、秋人君!!」
「おー?」
秋人君は手に湿布や包帯を持ってて
どうした?という顔で僕を見た
「服を貸してくれたのは感謝するけどっ!何この服!!」
「おお!いいだろその服!」
「いいだろじゃないよ!!」
「な、なんだよ・・・なんで怒ってんだよ」
怒ってないよ!いや怒ってるよ!
「んだよ。似合ってんぞ」
「に、似合ってる?(怒)」
秋人君が呟いた言葉にさらに苛立ちが生まれた
いやもう別の服を貸してくださいとかは言わないけどさ
言わないけど!!
「・・・お、漢って」
なんで、でかでかと黒文字で
“ 漢 ”と書かれたTシャツを僕が着なくちゃならないんだよ!
嫌味か?嫌味なのか?
男らしくない僕に対する嫌味なのか!?
「ぼ、僕は男だ」
「はぁ?んなの分かってるよ」
あいにくだが、僕は本当に性格が悪いから
せっかくこうやって服を貸してくれたのに
文句しか頭に浮かばないよ
「まぁほら、足見せろよ」
「・・・・っ」
とりあえず落ち着け忍
こんな事でいちいち腹を立ててどうするんだ
下手にキレてしまって
この不良を怒らせたらどうする
Tシャツくらい・・・なんともない
頭の中を少し整理させて
秋人君に言われた通りに足を出すと
慣れた手つきで僕の足に湿布を貼っては
その上から湿布が剥がれないように包帯で固定してくれた
僕の足を看てくれてる間、秋人君の顔を見てたけど
秋人君だって、頬に殴られた痣があった
唇も、少しだけ切れてるみたいだし・・・
「ん、終わったぞ。一応今度病院行って来いよ」
「う、うん・・・」
そんな事を思っていると、手当はあっという間に終わって
綺麗に巻かれた足を見ると
秋人君は本当に器用なんだな、と思った
家事全般こなしてるみたいだし・・・主夫か
「忍、腹減ってねぇ?」
その時、僕を見上げて秋人君はそう言った
「え?・・・あ、っと・・・少しだけ」
そういえば、お昼食べてなかったから
お腹空いてる・・・かも
「んじゃ、何か作ってやるから。
ちょっと待ってろ」
「えっ、いいよ!そこまでしてもらったら悪いし!」
台所へ行こうとした秋人君の腕を反射的に掴んでしまった
「腹減ってんだろ?」
お腹は空いたけどっ
さすがにこれ以上借りを作る訳には・・・
必死に腕を掴む手に力を入れて引き止めようとした
「・・・ぼ、僕なんかの為にそんな事までしてくれなくていい」
って・・・何を言ってるんだ僕は
「はぁ?なんだよ僕なんかって」
秋人君は、借りとか・・・
見返りがほしくてとか・・・
そんな事思うような人じゃないって分かってるのに
多分、素で僕の為にしてくれようとしてるんだと思うのに
僕みたいに、性格ひん曲がってなんかないのに
「とにかく・・・ご飯なんていいから・・・
ぼ、僕もう、帰るし・・・」
その時、少しだけ声が震えてきた
なんでこんな事になったのかと
考えると、今日一日の事が頭を過って
秋人君にここまで世話になってしまってると考えると
急に、目の奥が熱くなってきた
「忍?」
今日一日の後悔が一気にこみ上げてきて涙が零れた
「・・・っ」
あの時、女装を提案してきた女子から逃げてさえいれば
「ご・・・ごめ・・・」
階段でドジ踏んで、落ちさえしなければ
「おい、忍」
不良なんかの上に落ちなければ
「ぅっ・・・っ・・・ぅぐ・・・」
あいつらに太刀打ち出来るほど僕が強かったら
「ごめっ・・・」
秋人君だって、あいつらに殴られなくて済んだのに
「なんで謝ってんの?」
「だ、だって・・・僕のせいでっ・・・
あ・・・秋人君殴られ・・・て」
本当に、僕は自分の身一つ守れなくて
そのせいであれ程練習した演劇にも
怪我をして出れなくなって
周りの人に沢山迷惑を掛けたのに
「ご、め・・・なさ・・・っ・・ヒッグ・・」
優しくしてくれてる秋人君にさえ
素直にありがとうと言えないなんて
「泣くなよ」
「ごめ、・・・僕・・・何も出来な・・」
「忍」
本当に僕は性格の悪い無力な男だ
「っ・・・うぅ・・・」
考え出したら止まらなくなって
比例して涙も収まらなくて
泣くなんてかっこ悪いと分かっているのに
子供みたいに秋人君の腕に縋り付いて
そのまま泣き続けた
「・・・・泣くなよ」
すると、いきなり秋人君はしゃがんで
僕と同じ目線に視線を落としてきて
「っ・・・な、なに?」
僕の目をじっと見つめてきたと思ったら
急に頬に手を添えられて
「っ!?」
唇に・・・・柔らかい感触がした
かと思えば、秋人君は顔を離して
「涙、止まったな」
「・・・・」
え・・・・・な、なに?
「〜〜〜〜〜ッ!?」
「ははっ、顔真っ赤だぞ」
ま、待って待って待って!!
何今の!!なんだ今のは!?
突然の事に驚いた僕は、唇を抑えて
目をぐるぐるさせた
「僕なんかの為にとか言うなよ」
「ふぇっ!?」
そんな僕を、秋人君は抱き締めてきて
「ちょっ!!」
「忍はさ、もっと自分に自信持てよ」
頭を撫でながらそう呟いた
「あ、秋人君!!さ、さっきの!」
と言うか!そんな事より!
さっきのはなんだよ!!
き、キスじゃないのか!?
いきなり、キスしてくるなんて!!
「ふぉっ、っとえぇっ!?」
だ、駄目だっ!頭が混乱してっ
「ぷっ、テンパりすぎ・・・」
笑ってんじゃないよ!!
なんだよ!!どういうつもりでこんな事っ
「な、なんでっキスなんかっ」
「ん?・・・駄目だったか?」
駄目に決まってるだろ!!
「駄目、というかっ駄目だけど駄目というより駄目以前にそのっ」
くそっ、言葉が出てこないよ!!
とにかく、離して秋人君っ!!
「・・・・忍」
あわあわとテンパっていると
そんな僕を抱き締めたまま、
秋人君は何かを呟いた
「俺、忍の事好きなんだけど」
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