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治らない傷
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放課後、また先生に呼び出されて
日野を連れて職員室に向かった
先生からの話は、生徒会が日野の面倒を見る件について。
話はすぐに終わったけど
まさか、今度の中間テストまで
日野の勉強を見てやってほしいと言われるなんて
「・・・・はぁ」
「んぉ?いっちゃんどうした?
ため息なんかつきおって」
「いや、なんでもないよ。
それよりその呼び方やめてもらえる?」
「えっ!なんでや!親しみやすいやろ?」
「全然」
素っ気なくそう言うと、日野は口先を尖らせて
何かをブツブツ言っている。
そんな日野を横目に僕は先生に頭を下げて挨拶を済ました
「失礼しました」
それから先生に渡された資料を持って、
僕達は職員室から出た
大量の資料を抱えると、両肩にズンとした重みがかかる
「いやぁ〜、しかし明日から忙しくなるなあ」
「おかげさまでね。」
僕の隣で、日野は呑気に笑っていて
どこかウキウキしている。
そんな日野を見るとため息が出た
あと一週間後にはテスト期間に入る
それまでに、ある程度日野に勉強を教えてあげないと
言い渡された仕事はきちんと果たさなければならない
「それよか、いっちゃんが毎日教えてくれるがやったら
嫌いな勉強もちっとは好きになれそうやわ♪」
いきなり、日野は僕の方を向いてにかっと笑った
「悪いけど、教えるのは僕だけじゃないからね」
「ええっ!?だってセンセぇいっちゃんにお願いしよったやん!」
「それは会長である僕にだよ。
君の学力向上には生徒会全員で支援していくよ」
「ってことは、姫とナルにも教えて貰えるって事か?」
「・・・・」
その呼び方は変えないんだな。
「そうだよ。あと大崎にも手伝ってもらう。
その代わり、生徒会メンバーが日野に付けるのは
テスト期間までの一週間だけだから」
僕達だって、テストに向けての勉強があるし。
「ムっ。なんや皆に悪いなあ」
「悪いと思うなら頑張ってよね」
そんな話をしながら
ニ階から三階に上がる階段に差し掛かった時、
何やら日野はにやりと笑った
「ま、姫と二人きりでお勉強会❤︎
それはそれで楽しみやわ❤︎」
「・・・・・」
そうか、この男軽いんだった
成海はともかく、大崎や新と二人きりにさせるのはまずいな・・・
何か手を打たないと
「ん?そう言えば姫は何年生なが?
二年のクラス行ってもどこにもおらんかったぞ」
いきなり、日野は頭にハテナを浮かべながら
僕にそう聞いてきた
「新は一年生だよ」
「ぬえっ!!!い、一年生?
ちょ、ちょいまち!じゃあしーちゃんは??」
しーちゃん???
お、大崎の事かな?
「大崎も一年生だよ」
少し驚いている日野にそう言うと、
これまた大きく目を開いて驚きを見せた
「そ、そんなっ!俺、年下の子に勉強教えられるがか!?」
そして、少しだけ顔が青ざめていた
「新も大崎も学年で1、2を争う成績上位者で
二人ともとても優秀な生徒だよ。
それに、君は基礎から理解しないと」
「そんな!俺は嫌ぞ!年下に舐められとぉない!」
「なら、もっと頑張って勉強しておくべきだったね」
「うっ」
少し強い口調で僕が言うと、日野はぐっと喉を鳴らし
また口先を尖らせた
「・・・はぁ」
またため息をついて、先程先生に話された事を思い出す。
・・・本当に
日野と接触してみて、頭は良くないだろうと思っていたけど
まさか、学力が中学1年生並みだなんて。
よく転入を受け入れたものだよ。
なんとかこの一週間で僕達のレベルまで引き上げないとな・・・
これから忙しくなりそうだ・・・
そんな事を考えながら
ようやく生徒会室の前まで来た僕はゆっくりと扉を開けた
「成海、今戻っ・・・」
すぐに、開け掛けた扉を止めた
「なんや?」
日野が扉の中を覗くが、
僕は少しだけ後ろに下がってしまった
「ん?二人とも何しゆうぞ」
「・・・・」
生徒会室に入ろうとした日野の腕を掴んだ
何故そうしたかは分からない
ただ、まだ入ってはいけないと思った
「少し・・・・待って」
日野から手を離し、今度は胸に手を当て握り締める
目に入った光景は、新と成海が抱き合ってキスをしているところ
見た瞬間に、また胸がぎゅっと痛んだ
「いっちゃん?」
分かっていた事なのに、二人が付き合えば
こういう場面を見ることになるかもしれないと
覚悟していたのに
「・・・・新」
心の準備をしていなかった時、
不意にその光景を見てしまったら
また、あの時の思いが込み上げてくる
「・・・っ」
駄目だ・・・今、僕はきっと酷い顔をしている
冷静になれ
ちゃんと笑顔で、もう僕は大丈夫だよと
新にちゃんと伝わるように・・・
「いっちゃん・・・」
新への思いはもう、殺したんだ
だから、今度は二人を応援する側だ
僕が傷付いていてどうする・・・
落ち着け、大丈夫だ。
もうちゃんと二人を見れる
そう自分に言い聞かせ、
少し震える手でまた扉を開こうとした時
「いっちゃん♪」
「!?」
僕の手より先に、日野が扉に手を掛けて
そして僕を見て何かを呟いた
「そんな顔、他でせん方がえいで?」
「え?」
「俺、いっちゃんに興味湧いたわ❤︎」
そう言って今度は、どこか怪しい笑顔で日野は笑った
その笑みに、少しだけ背筋がゾクっとした
「お二人さん♪」
そのまま、日野は生徒会室に入った
続けて僕も中へと足を踏み入れる
「ここはイチャイチャクラブちゃうぞ♪」
新と成海の視線が飛んでくる
「新、成海、任せておいた仕事は進んだ?」
二人と目が合うと、自然にいつもの笑顔が零れる
「えっ!は、はい今すぐ・・・」
だけど、顔を真っ赤にして慌てる新を見ると
やっぱり胸が
ぎゅっと痛んだ
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