アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
深まる謎
-
生徒会室に戻った僕は
ソファへと腰を下ろして天井を見上げた
日野はまだ生徒会室には来ていなかった
少しホッとして、図書室から借りてきた本に目をやった
さっきの出来事を新は成海に話すかもしれないけど
成海にはちゃんと何も無かったと
言えるようにしなければならない
図書室での事は、僕も早く忘れよう
「今日は幕末のところかな?」
そして、別の事を考えようと
引き継いだ日野への勉強の事へ
頭をシフトチェンジさせる
「日野も少しは大人しくしてくれると助かるのにな」
日野と新は本当に真逆の性格
僕は日野が苦手だ
舞園同様、いつも機嫌がいい分
本当は何を考えているか全く分からない
「はぁ・・・」
図書室から借りてきた本を持ち込み
何ページか本の内容に目を通した
「かーいちょ❤︎」
その時、生徒会室の扉から
僕を呼ぶ声が聞こえた
「舞園・・・」
噂をすれば・・・
「ふふっ❤︎お久しぶりですね❤︎」
そう言えば、舞園に暫く会ってなかった
けど、久しぶりなんて感覚がしない
舞園と似た雰囲気の日野が居たからかな?
「どうしたの?」
パタンと本を閉じて、
ウキウキしながらこちらに近付いてくる舞園にそう聞いた
「“どうしたの?”じゃないですよぉ〜
頼まれた仕事を終えたので、
ご報告に来ました❤︎」
にこっと笑ってそう言った舞園を見て
数日前に舞園に頼み事をしたのを思い出した
「ああ、そうか。ありがとう。」
「ふふっ❤︎大変だったんですからね❤︎」
舞園は背中に回していた手を前に出し
持っていた資料を僕に渡した
「結構出て来ましたよ。彼の謎」
舞園に頼んだ事とは、
「そうだね。」
日野龍也という人間について。
日野の転入には、いくつか引っかかるものがあった。
だから、日野には悪いけど
僕個人で君について調べさせてもらうよ。
その為に、情報収集能力に優れた
舞園に協力をお願いした
「ここまで細かく調べてくるなんて。
舞園、ほんとに君は何者?」
とは言うものの、僕は舞園の事も少し気になる。
この子も謎が多過ぎる
そういう所は、また日野と似ているな
「ふふっ❤︎ナイショですよ❤︎
それよりも、今は彼の事です❤︎」
舞園はふふっと笑って
資料を指差した
確かに、今は日野について
僕はちゃんと把握しておきたい
「プロフィールは至って普通だね」
「ええ。特におかしな所はありません❤︎」
「・・・・・」
資料の一枚目は日野の個人プロフィール
特に引っかかる点は無かった
あるとしたら、以前の高校を
たった三ヶ月で辞めている事だ
二枚目は、日野の親族や家柄について
「・・・ん?」
その内容に、僕は少し驚いた
「ふふっ❤︎興味深いですよね。彼」
二枚目の内容。親族について
「・・・・一人も居ない?」
そこは、全くの空白
書き記されて居たのは
桐島優という人物のみ
「・・・舞園、どういうこと?」
「知りませんよぉ〜!いくら調べても
彼のデータが出て来ないんです。
家系についても、何も手掛かりがなく。
やっと見つけたと思ったら
その桐島という人しか出て来なかったんです。」
「・・・・・桐島・・・優」
続柄 兄
だけど、日野は血は繋がっていないと言っていた
「ふふっ❤︎会長❤︎
驚くのはあと二枚の資料を見てからにして下さい❤︎」
「??」
舞園にそう言われて、次のページへとめくった
「なぜ、偏差値20の彼がこの学校へ転入出来たか。
中々面白いものでしたよ❤︎」
そう言った舞園は、またにこっと笑った
隅々まで目を通し終えると
日野について少し理解出来た
「なるほど。これは凄いね」
「はい❤︎この学校に一人として居ない人材です❤︎」
・・・正直驚いた。
日野の学力は著しく0に等しい
だが、
「スポーツテストをオール5で合格」
「しかもプラスまで付いてますよ❤︎」
身体能力が、平均値を大いに越している
本当に日本人かと疑いたくなる
「確かに、この学校には
スポーツを専門とした人材は居ないからね」
父さんが日野を引き入れた訳が分かった気がするよ
「ふふっ❤︎さぁ、最後のページです❤︎」
そしてまたページをめくり
最後の資料へと目を通す
「これって・・・」
これは、日野の・・・
「調べている内に、少し興味が出て来たので
彼の過去を少しだけ炙り出してみました❤︎」
「舞園、これはまずいんじゃないの?」
「えっ?大丈夫ですよ❤︎
ちゃんと法律は守ってます❤︎」
にこにこと笑いながら
舞園はそう言ってるけど
これは、日野の過去の形跡
「まぁ調べたと言っても、
やっぱり彼の過去には謎の空白が多かったので
データに出来たのは彼の入院歴くらいですけど」
入院歴・・・
この資料にびっしりと埋め尽くされた
様々な病院の名前
「あと、不思議に思ったのがここです」
舞園はその資料の真ん中辺りを指差した
「え・・・これ」
「はい。不思議なんですよね。
彼が小学六年生の夏、
この時も入院してるんですが、
全く同じ時期に、桐島という人も入院してるんですよ」
どういう事だ・・・
日野は何か病気なのか?
桐島という人と、一体どんな繋がりがあるんだ?
同じ時期に入院なんて
何か二人で居る時事故にでもあったのか?
「・・・・分かった。
ここまで調べてくれてありがとう」
日野は、一体何者なんだ・・・
身体能力が優れているのに
これ程入院を何度も繰り返しているなんて
「舞園。手間を掛けたね」
「いいんですよ❤︎
会長の力になりたいんですもん❤︎」
とりあえず、これからもっと日野と接触して
なんとか日野についてもう少し理解しなければならない
データだけでは、きちんとした事が分からない
何かの病気を患っているなら
その事もちゃんと知る必要がある
「それより舞園、なんで日野に会わないの?」
「ええー、嫌ですよぉ〜!
彼、わたしと同じニオイがして
なんか近付きたくないんです。」
「・・・・・そ、そうなんだ」
自覚あるんだね。
確かに日野と舞園は似てるな。
雰囲気とか、謎が多いところも
「はぁ・・・そろそろ日野が来る時間だから、
会うのが嫌ならもう帰った方がいいよ。」
「えっ!ほんとですかっ!?
それはまずいですねっ!
じゃ、じゃあ失礼しますっ!」
「ん、ありがとう舞園。またね」
慌てて生徒会室を出ようとした舞園に
僕は笑って手を振った
「あっ!会長!」
すると、扉からひょこっと顔を出して
舞園は何かを言った
「彼には気を付けて下さいね❤︎
何か危ないにおいがします❤︎」
「えっ?」
そう言った舞園は、
僕に向かって綺麗にウインクをし、行ってしまった
「気を付けて・・・か」
そしてソファにまた深く腰を掛け
天井を見上げた
「はぁ・・・困ったな」
今日は色んな事があり過ぎて
少し疲れた
「・・・・」
日野が来るまで、少しだけ休んでおこうか
「ん?・・・」
あれ、休むなんて・・・
今まで考えた事無かったのに
「ふふっ・・・・新のおかげかな」
また頭に新が浮かんで
新の笑顔を思い出しながら
僕は静かに目を閉じた
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
178 / 617