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最低な男とは
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いきなり何を言っているんだ・・・
「なにをふざけた事を・・・」
「ふざけてないぞ。大真面目や。」
日野は触れて来る手を止めたまま
顔を近付けてきて
いつもの気の抜けた顔とは全く真逆の
本当に真剣な顔つきで僕を見てくる
「日野、退いて」
・・・新の代わり?
本当に冗談が過ぎるよお前は
どこをどう見たら新の代わりになるんだ
「いっちゃん、俺は」
何も知らないくせに
出しゃばった事をするな
僕の中に踏み込んで来るな
「退け」
イライラする
「・・・・・・っ」
僕が言った言葉に日野は下を向いてしまって
暫く沈黙が流れ
いい加減、ソファから起き上がろうとした時
「強情やな」
日野がそう呟いて
その後僕は肩を押さえつけられ
またソファに押し倒された
「っ!?」
肩を押さえる日野の手の力は
想像を絶する強さで、肩がズキっと痛んだ
「俺は知っとるぞ」
そして、日野は下を向いたまま
また何かを呟いた
「一人の時はずっと姫の事考えゆう事も」
「は?・・・」
日野が呟いた言葉に
心臓がドクンと脈を打った
「姫を傷付けんように、ナルと上手く行くように
二人の前では作り笑いしゆう事も」
「なに、言って・・・」
「俺、転校して来たばっかやき
いっちゃんの事何も知らんし
姫やナルの事もよく分からんけんど」
「・・・・・やめろ」
何を言い出したかと思えば・・・
知った風な口を効くな
お前は何も知らない
何も知らないからこそ
次に言おうとしている言葉を口に出すな・・・
「いっちゃんは「黙れ」」
僕が必死に殺そうとしている気持ちを
必死に忘れようとしている事を
僕の事を理解していないお前が
簡単に口にするな
「日野、君が何を思おうが
僕は新の事はただの後輩だと思っている。
特別な感情なんて無い」
あったとしても、それは過去の話だ
「嘘付くなや」
「・・・なに?嘘?」
「俺と姫を間違えてキスするくらい
まだ全然姫の事が好きで仕方が無いがやろ?」
「・・・は?・・・いつ僕が日野と新を間違えたんだ」
「さっきや。寝言で何度も新、新って呼びよった」
さっき?・・・
「・・・っ」
なんだ?・・・じゃあ、あの夢は
あのリアルな肌の感触と熱は
まさか、日野だったのか?
心臓がまたざわめく
「目が覚めた時、目の前におったのが
姫やったら、いっちゃんどうしとった?」
駄目だ
日野の目から逃れられない
「ただの後輩やと思うがやったら
あんな寂しそうに名前なんか呼ぶなや」
「・・・っ」
「窓の外見る度、姫を思うくらいなら
ただの後輩なんて嘘付くなや」
なんで・・・お前がそんな事を言うんだ
「黙れ・・・やめろ・・」
どうして、僕が心に掛けた鍵を
お前なんかが解こうとするんだ
「お前に・・・何が分かる・・・」
最初から僕は失敗ばかりだった
新を傷付けて、また傷付けて
最後にようやく新の幸せを思う事が出来て
やっと心置き無く身を引けたと思った
だけど、成海と新が付き合う事になると
その現実が想像以上に僕の心に重くのしかかってきて
「・・・駄目なんだよ」
頭の中では諦めたと整理出来ていたはずなのに
「もう触れる事も・・・好きだと伝える事も出来ない」
新への気持ちは、止めどなく溢れてくる
「どうしようも無いだろ・・・もう新は成海のものなんだ
そう分かっているのに、
僕はまだ新への気持ちを捨てきれないでいる
いつか僕の元へと来てくれると
まだそんな事を心の何処かで思ってる」
日野相手に何を言っているんだ僕は
「新を思えば思う程、僕の心は荒んでいく・・・
女々しくて汚い思いだけが僕の中に溢れてくるんだよ」
こんな事を言うなんて
「いつもヘラヘラして誰にでも好意を向けるお前に
何が分かる・・・」
・・・僕らしくないのに
「・・・そうやな」
下を向いていた日野は
いきなり顔を上げて
今度は僕の胸に唇を押し付けてきた
「なっ・・・日野っ!」
この状況で、まだこんな事を続けるつもりか?
「やめろ!触るな!!」
とうとう我慢が効かなくなって
僕は日野を殴ろうとした
「いっちゃんは荒んでない」
だけど日野は僕の腕を掴んで
手首にキスをしてきた
「っ・・・な、に・・・」
「好きな人を一途に思って
それがどんなに強い思いやとしても
結局は自分の気持ち押し殺そうとして
その人を大事にしたいと思いよる
真っ直ぐで、純粋な気持ちやん」
「は?・・・」
純粋? そんな訳ないだろ
「いっちゃん・・・」
「っ!・・・やめ・・・」
日野はまた唇を僕の肌に這わせ
首筋まで到達した時、ボソっと何かを呟いた
「綺麗やで」
その言葉がジンと耳の中へと入ってきて
「っ・・・んっ・・・」
「めちゃくちゃ綺麗やで。いっちゃんは」
日野の声が 頭に響いてくる
「やき俺を利用しぃや。」
「利用?・・・」
顔を上げて目が合った瞬間、
日野はいつものように笑って僕を見た
「俺は傷付いたいっちゃんにつけ込む軽い男って事で。
いっちゃんは俺を姫の代わりとして
行き場の無いなった気持ちを
全部俺にぶつけたらいい」
「・・・だから、新の代わりになんて」
「なれんでも、俺はいくらでも聞くぞ」
また、日野はにかっと笑う
「まぁ俺こんな容姿やき
そらあんな可愛い姫の代わりなんて
考えられんかもやけどさ
姫が恋しくなったら、俺に言うてや?」
新が・・・恋しくなったら?
「こうやってさ、触れ合うだけで
ちっとは気持ちも紛れるかもしれんぞ。
俺はそんないっちゃんにつけ込む最低な男やき、
いくら傷付けられてもかまんし
いっちゃんが自分の事を最低やと思いよるなら俺と一緒や」
「一緒?」
「おう!最低な男同士や!」
・・・・確かに僕は最低な男だ
だけど、日野はきっとそんな奴じゃない
今の日野の言った事と
僕に向けるその笑顔を見ると
日野は多分、僕の事を思ってそう言ってくれたんだと思った
ただの手の早い軽い男だと思っていたのに
「な?いっちゃん。やき今は気持ち良くなろうや」
最低な男同士・・・か
「気持ち良くなって、全部忘れたらえいよ」
忘れたらいいのか
新じゃない誰かに触れて
「っ・・・ん」
日野の言った言葉を考えると、頭の中が吹っ切れて
僕は体の力を抜いた
「・・・っ、・・・ぁ・・・」
「いっちゃん、気持ちい?」
日野はまた手を動かし始め
少し息を漏らしながら
僕の耳元でそう呟いてくる
日野に触れられながらも
僕は天井を見つめたまま、新の事を考えていた
「・・・いっちゃん」
そして、日野の手が後ろに回ろうとした時
プツンと頭の中で何かが切れる音がした
「ちょっ!?えっ?」
僕は体を起こし、日野の肩を押さえつけ後ろを向かせた
「い、いっちゃん??」
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