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事実
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秋人君が言った事にまず驚いたのは
渋谷君が鷹中出身だと言う事だった
クラスでの自己紹介の時はどこの中学卒業か
渋谷君は話してなかったし
別に周りも気にはしてなかったから
僕も今まで聞くことは無かった
まさか、出身が鷹中だなんて・・・
そしてもう一つ、秋人君が呟いた
“ トップ ”の意味が、僕は分からなかった
「せ、成績がトップだったの?」
とりあえず秋人君にそう聞いてみた
渋谷君は頭が良いし、現に今も学年トップの地位に居る。
その言葉の意味は、そう言う事だと思った
「ははっ!違うっスよ♪」
「え?」
向かいの鬼が、ぶはっと息を吐いて笑った
僕の頭の上に更にハテナが浮かんだ
「まぁ、新は頭良かったし、卒業する頃には
確かに成績もトップだったぜ」
成績“も”?・・・
それ以外の何のトップだったと言うんだ
「あいつ、鷹中の不良を束ねてたんだよ。」
「ふぁ??」
「それに鷹中が県内に名を広めたのも、
新さんの活躍あってこそっスよ!」
「・・・・・」
渋谷君が・・・不良?
「あはは・・・じょ、冗談はやめてよ」
なんて笑える冗談だ。
渋谷君が不良なワケないだろ
しかも、鷹中の不良を束ねていたトップとか
「ないよ・・・渋谷君はそんな」
大体、噂ではその不良の頭は
鬼のような奴で・・・ゴリラみたいな奴だって
僕の学校では噂されてたんだぞ
ゴリラとは真逆の僕と身長もそう変わらない渋谷君が
そんな不良の頭とか・・・
「忍ちん、新さんを舐めてんスか?」
「へ?」
「トップを笑う事は許さねぇっスよ。
いくら秋人さんの連れだとしても」
急にそう言われ、場の空気が一気に冷たくなった
目の前の二人の鬼は、恐ろしい目で僕を睨んで来た
背筋がゾクっとして、僕は下を向いた
「おい、殺気立つな。
忍は知らなかったんだから仕方ねえだろ」
「けど秋人さん!トップは」
「黙って座れ」
「・・・っ」
椅子から立ち上がって身を乗り出した鬼に
今度は秋人君が睨んで
一言そう言うと、鬼は大人しく椅子に腰を掛けた
怖いよ。なんだよもう
お前らさっきまでニコニコしてたじゃないか・・・
「忍」
「・・・は、はい」
下を向いていたら、秋人君は
いつもの声に戻ってて
僕は顔をゆっくりとあげて秋人君を見た
「悪かった。」
何故か謝って来て、僕の頭をポンポンとしてきた
「こいつら新の事まじで尊敬してっから。
さっきの事は許してやってくれ」
「・・・え」
謝って来たのは、どうやら
先程の鬼達が僕に殺気を放った事に対してのようだ
秋人君に続いて、目の前の鬼も
僕に頭を下げて謝って来た
「い、いえ・・・僕も、ご、ごめんなさい」
とりあえず僕も謝った
謝ったけど
まさか、渋谷君があの鷹中を占めていた人だったなんて
まだ信じられない・・・
あの身長、体格で・・・この鬼達を従えていたなんて
「へへっ、ちなみに秋人さんは
鷹中のツートップっスよ?」
「ふぇ?」
知らされた事実にズドーンとしていたら、
またニコニコ笑顔に戻った鬼が
これまた嬉しそうにそう言ってきた
秋人君がツートップ?
トップの次に強いと言うことか?
生徒会で言えば、副会長の地位と言うことか??
「秋人さんが居たから新さんも心開いて
オレ達と連んでくれるようになったんスよね。
ほんと、秋人さんにも感謝してます」
「いいよ。俺別に大した事してねぇし」
頭の中がこんがらがる中
僕を置いて三人は昔話に花を咲かせていた
「・・・・・」
いや、僕は本当にやばいんじゃないのか
クラスメイトには鷹中の不良トップ
そして、現在の彼氏(強制的)は
そのトップの下に続くツートップ
リアルに不良に囲まれてるよ。
環境最悪過ぎるよ
絶対渋谷君には逆らえない・・・
秋人君にも・・・逆らったら半殺しにされる
「・・・・っ」
そう考えると手が震えてきた
僕は今まで、この事実を知らずに
渋谷君と接していたのか
あれ・・・なら、先輩は?
先輩や会長はこの事を知っているのか?
先輩は知ってて渋谷君と付き合ってるのか?
それとも・・・渋谷君に脅されて
「あ、あの・・・」
「ん?なんスか?」
とにかく、中学時代の渋谷君が
どんな人だったのか気になって
僕は目の前の鬼に声を掛けようとしたが
この鬼達の名前が思い出せない。(泣)
「えっと・・・あ、貴方達から見て
渋谷君って・・・どんな人ですか?」
名前を誤魔化しながらそう聞くと
鬼二人は顔を見合わせてニコっと笑った
「騙しやすい人っス!!」
「・・・はへ?」
「ぷはっ、確かに言えてるwww」
鬼が言った言葉に、秋人君は吹き出して
お腹を抱えて笑い始めた
「だ、騙しやすい??」
待て、君達は渋谷君を尊敬しているんじゃなかったのか?
舐めた事を言ってるのは君達じゃないのか!?
「あー、言い方まずかったスね。
正確に言えば、本当に単純で素直な人なんスよ。
普段はツンツンしてんスけどね!ww」
そう言い直した鬼はまたニコニコし始め
ストローに口をつけた
単純で素直・・・か
学校ではあまり話さないし
話すとしても生徒会関係の事のみだし・・・
僕は渋谷君の事を全然知らない
先輩に対しても、単純で素直なんだろうか
また、そんな事が頭を過った
「忍はさ、新の事どう思う?」
「え?」
「あいつ、確かに昔は荒れてたけどさ
今はだいぶ丸くなったし、根は誰よりも真面目なんだよ」
真面目・・・
その言葉を聞くと、今日貰ったノートの事を思い出した
「ダチの為には体張るし、
大事にしようと思った奴の言う事には
素直に信じてぜってぇ裏切らねえ奴なんだよ」
秋人君は懐かしそうにそう話し始めた
その横顔はとても穏やかで、
渋谷君の事を話す秋人君はどこか楽しそうだった
「だからさ、忍が新とダチって知った時
俺すげえ嬉しかったんだ」
「・・・・・」
・・・・・・どうして君も
今朝の渋谷君みたいに笑うんだ
「・・・そ、そうなんだ」
僕は渋谷君の事を1ミリも信じてないし
君の事だって信じてない
気も許してないんだよ
ただ怯えて、ビクビクしながら
君とこうしているだけなのに
僕を信じ切ってるみたいに
ペラペラとそんな話をしないでよ・・・
「高校じゃあいつと離れちまったけど、
俺達が側に居れねぇ分、あいつの事よろしく頼むぜ」
「忍ちん!任せるっスね!」
下を向いたままの僕に
明るい声が降ってくる・・・
渋谷君の話を聞いて一つだけ分かった事があるよ。
「・・・へ、へい」
僕は学校でも渋谷君という未知の人物に
怯えながら生活を送らなくちゃいけないんだ(泣)
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