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同じにはなれない
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僕はその日初めて、授業をサボってしまった。
泣いても泣いても涙は止まらなくて
先生が戻って来る頃には泣き疲れて眠ってしまっていた。
気付けばもう放課後で、瞼がズンと重くなる中
僕は教室に戻った
扉を開くと、教室にポツンと一人
誰かが残っていて・・・
その姿を見るとまた涙が出そうになった
「あ・・・大崎、お前大丈夫かよ?」
「・・・・・・」
ほんとに、なんで君が居るのさ
「渋谷君・・・」
「授業出れねぇくらい具合悪いのか?」
「・・・・」
今一番会いたくない人
好きな人の、好きな人・・・
「大崎?」
「だ、大丈夫・・・です」
「・・・・・」
やばい。声が震える
と言うか、僕が戻ってくるのを待ってたのか?
「大丈夫ならいいけどよ・・・
まじで無理はすんなよ。何かあったら言えよ。
俺に出来る事なら何でもするし」
「・・・・」
渋谷君が言った言葉を聞くと、僕は下を向いた
・・・何かあったら・・・ね。
僕が先輩の事を好きだと言ったら
君はどうするつもりなんだ?
今日先輩に振られたと言えば
君は同情でもしてくれるのか?
好きでもないのに、秋人君と付き合ってるって知ったら
どうにかしてくれるのか?
「か、関係・・・ないだろ」
「え?」
もうほっといてくれよ
秋人君も君も、本当に勘違いにも程があるよ
ほんとに腹立つよ
無意識で無自覚でその無責任な優しさが
僕は一番嫌いなんだよ
「関係無いって・・・なんだそれ」
「・・・っ」
さっき僕が呟いた言葉は渋谷君に聞こえていたらしく
急に渋谷君は椅子から立ち上がって
僕の方へと近付いてきた
「大崎・・・」
「ひっ!」
渋谷君の手が振り上げられ
僕は殴られると思って目をぎゅっと閉じた
「関係無いとか言うなよ」
「・・・へ?」
だけど、頬に殴られた感覚はなく
目を開けると渋谷君は僕の肩に
ポンっと手を乗せてきた
そして少し僕を睨んだ後
渋谷君はニコリと笑った
「俺達ダチだろ?」
「・・・・・・・ダ、チ?」
「おう!だからそんな寂しい事言うなよ!」
渋谷君はそう言って、またニシシっと笑う・・・
「・・・・」
その笑顔は
秋人君と とてもよく似ていた
「・・・っ!」
「ちょっ、おい!大崎!」
その手を振り払って、僕は鞄を取り
猛ダッシュで渋谷君から逃げた
渋谷君にそう言われた時
秋人君と同じように笑掛けられた時
無性に心の中がざわざわした
嫌だった
あんなにはっきりと
僕の事を受け入れてくれてるような言葉が
「・・・っはぁ・・・はぁっ」
不良のくせに、
何の濁りもないその綺麗な眼で見られるのが
「くっ・・・ぅ、はぁっ・・・はぁ、っ」
嫌だった・・・
渋谷君も、秋人君も
僕なんかより全然綺麗な心を持ってる
言うことはいい加減なくせに
全然僕の気持ちを分かってないくせに
二人が放つ言葉はどれも暖かくて
それを素直に受け入れられない自分が
どうしようもなく嫌で仕方がない
「・・・はぁ・・・っ、はぁ」
全力で走って校門まで来た
こんなに走ったのは久し振りだった
大きく深呼吸をして
いつも秋人君が待ってる場所へと向かった
「おっ忍!昨日は悪かったな!迎えに来れなくて!(汗)」
そこにはいつもの秋人君
僕を見つけるなり顔の前で両手を合わせて
ごめんごめんと言ってくる
「あ、秋人君・・・」
「んお?どうした?」
「・・・」
今日こそ、ちゃんと断ろう・・・
これ以上こんな気持ちで秋人君と一緒に居るなんて無理だ
そう決心して、僕は秋人君の顔を真っ直ぐと見た
「え・・・・」
「ん?」
だけど秋人君の顔を見ると
そんな事より、別の事へ頭が働いた
「ど、どうしたのっその顔っ!」
見上げた秋人君の顔は殴られた様な跡があった
口元には絆創膏が貼られていて
左瞼も少し腫れている
「あ、あぁっこれな!
ちょっと昼に他校の奴らと喧嘩しててさ・・・」
「喧嘩?」
「あっ!いやでも勝ったぞ!」
勝ったとかそんなのどうでもいいよ
めちゃくちゃ痛そうなのに
なんでそんなにヘラヘラしてんの
楽しかったって言ってるみたいな顔で
なんで笑うんだよ
「し、忍?」
「・・・・・」
心配した僕が馬鹿だったよ
僕があんな思いをしてる時
君は大好きな喧嘩をしてたんだね
「・・・忍」
ヘラヘラ笑う秋人君に腹を立てていた時
急に顎をクイっとされ上を向かされた
「!?」
そして唇に触れる柔らかい感触と
少しだけ血の味・・・
「〜ッ!」
キスをされたと数秒後に理解し
僕はすぐに秋人君を突き放した
「な、なにすんの!!」
「え?・・・だ、駄目だったか?」
駄目だったかじゃないよ!
なんで今そんな事してくるんだよ!
ここは学校の前だぞ!!
もしも誰かに見られてたらっ
「・・・なぁ忍」
「っ、!」
最悪だと思い、テンパっていたら
秋人君は急に抱きついてきた
大きな体に包まれて僕は身動きが取れなくなった
「あ、ああ秋人君っ」
ちょっ、苦しっ(汗)
「忍」
抱き締めてまた、僕の名前を呼ぶ
耳に息がかかってドキドキなんてしたくないのに
今の状態に心臓が激しく脈を打ち始めた
「好き」
「ふぇ??」
秋人君の腕の中でキュウっと身を縮こませて居ると
耳元で秋人君はそう呟いた
「・・・・」
だけど、僕はその言葉を聞くと
さっきまでのドキドキが収まってしまった
きっと、さっきの動悸は
突然の事にびっくりしただけで
慣れてない事をされたからで・・・
好きだと聞いたら
気持ちはだんだんと落ち着いていく
「ぼ・・・僕は・・・」
あぁ・・・そうか。
やっぱりもうこれ以上は無理だ
ちゃんと、僕も言わないと
「好き・・・じゃない」
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